「ね、準太!」
「おはよ名前」
「キャッチャ−誰?!」
「唐突だな。和さんがどうかした?」
「違うっ和さんは知ってるよ!そうじゃなくて」

凄い可愛い子を見つけた。準太は今日も真面目にやってるか?ん?なんて思いながら覗いたグラウンドで、その子が笑ってるのも不貞腐れてるのも見てる私はふわりと笑顔になれた。とにかく凄く可愛い彼は今まで見たことないし新入生だろうなと思った。

「あぁ。利央ね、」
「…リオ?」
「利央。仲沢利央。名前、利央みたいなのがタイプだったんだ?」
「た、タイプとかっていうか、ただ凄い可愛いなぁって思って」
「へぇ−」

含み笑いする彼に何よと問えば、別に−と言いながらも直後に真剣な表情を見せ、こう言った。

「名前は、グラウンドに俺を見に来てんだと思ってた。」

登校してきて準太見つけるなりあんなに一方的に質問を浴びせてた私は、そういえばおはようさえ言ってない。今の準太の言葉に正直心臓が跳ねた。受け取り方によってはこれ…なんて、きっと本当は考える必要もないような事さえ脳内を巡って。

「…うん、まぁそうだよ。これからもしっかり見張っててあげるからサボらずに精進しなさいよ」

ポンと肩を叩けば、ふと微笑んで、はいはい苗字監督、と言った彼に私も笑って返した。


それからほぼ毎朝、昨日の利央くんはどんなだった?と尋ねていたら、その度に見にくりゃいいのに、名前から話し掛けてやればと言われたけど、準太がタイプとかなんとか変な事言うからグラウンドに行けなくなってしまったじゃないか。

「俺を監視するんじゃなかったっけ」
「準太くんの事だから真面目にやってるでしょう。うん、私信じてる。」
「よく言うぜ」

いつもの様な朝を迎えいつものような会話をして。


そんなある日の昼休み、教室のドアを開けた感触を偉く軽いなと思ったその時にはもう人にぶつかっていた。

「準さ、うわっ」
「みゅっ」

まさかそんなベタな事が起こり得るなんて想定していなかった為に、まともに顔から突っ込んじゃってしゃがみこんだ。鼻が痛い。

「わ−っすみません俺っ」
「名前、みゅって何だよみゅって」
「煩いな準太は−っ」

すみませんすみませんと焦る相手に、いえ平気です鼻血でなかったし−なんてヘラッと笑い鼻擦りながら、その人から差し出された手を借り立ち上がった私は、言葉のとおり固まった。

「は?」
「え?」

当事者二人が硬直する中、横で準太だけが必死に笑いを堪えてるのが見えた。

「ちょ、え。待って、」
「あ、もしかして名前先輩?」
「え?」

何で名前?と言えば準太が俺が話したからに決まってるな、と涼しい顔。

「っていうか準太、誰なのこの人」
「利央だろ。」
「そんなわけないでしょ」
「なんだそれ、名前のお気に入りの仲沢利央だって」
「嘘だ−っ!」

取り乱す初対面の女と一人楽しそうな先輩を目の前に、一番困っているのは利央くんだろう。

「嘘なんかつかね−よ。つか、何?さっきから」
「だって、だって背、高いっ!」

こんな可愛い顔してて、と思いながら準太と彼を交互に見た。ただでさえ準太を見る時には見上げるのにそれ以上なのだ。
それを比べられたんだと勘違いして悪かったなちっさくてとムスッとする準太や、状況把握に欠ける後輩を気遣う余裕なんて今はない。

「あの…、私。とりあえず、」
「ん?」
「え?」

「…逃げるっ」
「「はあ?!」」















壊れたものと残ったもの


100528 憂安


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