<※最後、キス表現有>
普通の男ならあそこで、私を抱き上げるだろう。
普通の男なら...
あのあと冷たい床に、そのままの状態で1時間待たされた。
“仲間をここへ呼ぶ。待っていろ。”
それだけを言い残し、やっと戻ってきたかと思えばそこにはただの白いクマ。それも人間の言葉を話す。
「何よ、あんた!トラファルガーは?」
「キャプテンは忙しいから...」
「ハァ?クマに用は無いのよ!」
「クマで、すみません。」
どうも私のペースが狂う。本来ならば心をかき乱して、男が落ちていく瞬間を楽しむのに。
乱されているのは私のほうだ。
(こういうこともあるわね。気にしなくていい。たまにはこういうのもいいじゃない。)
*
「足を診る。じっとしてろ。」
「あら、白衣。似合うじゃない?」
白いむさ苦しいクマに抱かれ、やっと船に乗せられたかと思うとすぐに診察台に乗せられる。
乗りたいのは貴方の上よ、なんて淫らなことを考える。見れば見るほどいい男だ。白い白衣が、それを更に引き立てる。
冷たい空気がぞくぞくさせる。
この男を落としたら、どんなに気持ちがいいだろう?
「治る?」
「あァ。」
素っ気ない返事。最初に見せた優しさは、一体なんだったのか。そのミステリアスなところが、名前の心をさらに惹きつけた。
男の術中に嵌ったとも知らないで、その中へ自ら入っていく。
「何も話さないのね。」
「.......」
ドレスのスリットから見える、白く細い脚にも目もくれず、淡々と進む処置に苛立ちを隠せない。
ただの奥手の男なのか?そんな疑問さえ出てくる。
「今まで何人と寝たの?」
「.........」
しばらく続く沈黙。これにも答えないのか、と名前は小さな溜息を漏らした。
(つまらない男...)
*
気が付くと目の前が真っ暗だった。長いまつげが視界に入る。唇には柔らかい感触。
「ん.....っ」
クチュっと音を立てて、舌が私の口内へと侵入してくる。
ねっとりと絡みつきは、逃げることを許さない。
(上手い......)
「余計なことは考えるな。 連れてってやるよ、まだ見たことも無い世界に。」
「何を...っ!」
私が貴方を連れてってあげるのよ!と必死で抵抗したが、こんなにもとろけるようなキスは初めてだった。
強張った筋肉が弛緩していく。名前はローに応えるかのように、彼の背中に手を回した。
甘い快楽に落ちていく。
落ちてはいけない、甘い罠に。
「ハァ...んっ...」
身体のそこから湧き上がる快感に、思わず吐息が漏れた。
攻めるはずが、いつの間にか攻められている。それを分かっているかのように、ローは名前の中をかき乱した。
息ができないほど激しく。
「ト、トラファ...ルガー...」
トロトロになった名前の秘部は、ヒクつきながらローを迎えるのを待っていた。
そして、あともう少しというところで、ローの身体がそっと離れる。
物足りない。
(女の扱いが上手いのね。)
ツーっと二人の唇を繋ぐ銀色の糸を手で拭う奥に、不敵な笑みが見えた。名前の背中にゾクっと電気が走る。