<魅惑的な目>

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「名前、お前何か隠してないか?」

夜、就寝のためにベッドに入ろうとした私を彼は呼び止めた。
さすがはロー。必死に平静を装っていたつもりだったのに、すぐにバレてしまう。

「何も隠してないよ...っ。」

「本当に?」

「本当に。」

が、ローはジリジリと距離を詰めてくる。縮まる二人の間。私のすぐ後ろには壁が迫ってきていた。

ドンーーッ!!

ローが壁を叩く音が耳元で鳴る。びっくりした私の身体は、びくん!っと跳ねた。目の前にはローの顔があって。

「嘘つくなよ。」

囁かれる低音。
あまり追い詰めないで欲しい。

出逢った瞬間、デートした瞬間。二人で雪の中を過ごした瞬間。
船の中で同じ飲み物を飲み、談笑した時間さえも。今までと何も変わらない日常が、名前の頭の中を駆け巡る。

本の力だろうか。
この短い期間の中で、自分が最初からこの世界の住人だと思うようになっていた。
ただハッキリ覚えていることは明日、私はこの日常を失う。

「...ローに話さなきゃならないことがある。」






その頃、現実の世界では。

「おい!名前っ!?」

「船長、どうしましょう...っ!もうこの状態で3日経ちましたよ。」

「呼吸、脈拍、体温、全てにおいて正常なんだが...っ。何度呼びかけても、返事しねェ。反応もねェ。くそっ!!」

「やっぱりこの本のせいですかね?」

「本気か?本でこんな風になると思うか?どうすればいい...っ!!」

名前!目を覚ませよ。
一体何があったんだ。

こんなことになるなら、あの時...。


名前は船を飛び出したあと、夜になっても帰ってこなかった。気になった俺は街へ出る。船員にも、名前を探させた。

名前を発見したのは図書館だ。
本を握りしめながら、最初は眠っているだけかと思ったが、呼びかけにも刺激にも反応しない。
船に連れ帰り、いくつかの処置を施したが効果は得られなかった。


このまま名前が目を覚まさなければ、俺はどうしたらいい?お前がいない世界なんて、もう考えられねぇ。

頼む、目を開けてくれ。俺が...、絶対にお前を助けるから。





本の中の世界の中では、もう6日目の夜が終わろうとしていた。
タイムリミットはあと24時間もないだろう。

「話さなきゃならないことがある。」

あのあと、流星群と共に消えてしまうということを伝えた。
信じてもらえないと思っていたが、突然現れたという事実と、私の必死さで受け入れてくれたようだった。

「なら、お前は明日消えるのか?」

「ん...たぶん。」

「そうか。」

そんな悲しそうな顔を見せないで欲しい。私もローとは離れたくない。

「俺は離れたくない。名前はどうなんだ。」

「そんなこと聞かないでよ。」

「なァ、今だけはお前を感じさせてくれよ。」

見つめ合う私とロー。魅惑的な鋭い目に、思考の糸は切れる。

ここには今、2人きり。身体も心もすべて、あなたのもの。手が触れ合った瞬間、2人の思いは交差した。





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