<取り合い>
「どうしてお前がこの島にいるんだよ。シャンクス。」
「まーそう怒るな、ロー。せっかくのクリスマスじゃないか。」
シャンクスは笑顔で、ローの肩を叩く。そんなシャンクスに対し、ローは鼻を鳴らすと肩を振った。誰が見ても分かるくらいの不機嫌さ全開の空気が漂っているが、ハートの海賊団船員たちはただオドオドするしかない。
(だからお頭、今日はやめとけって言ったんだ。)
(かたいこと言うな。俺だって名前とクリスマス過ごしたいんだ。ローにばかり良い思いさせてたまるかっ!!)
(子供か...。)
「で、一体なんの用だ。」
「今日はクリスマスだ!みんなで祝おうと思ってな。プレゼントを持ってきたんだ。ロー、お前にもあるぞっ!!」
シャンクスは甲板に積まれたたくさんの箱を指さした。さすが四皇と言ったところか。プレゼントの多さが半端ない。
シャチやベポたちは目を丸くしていた。
「それは貰っといてやる。だから、シャンクス。それを置いたら帰れ。」
「冷たいな。だけど、俺は名前と一緒に過ごしたいんだ。帰らねェ。」
ローの眉間に皺が寄る。手にかけた刀からはカチャリと音が聞こえた。
赤髪、頼むから船長を刺激しないでくれ!そんなハート海賊団船員の思いは、悲しいくらいに届かない。
「言っても分からないなら、力づくで教えるしかねぇな。」
「おう。やるか?」
ピリピリとした空気が漂う。これではせっかくのクリスマスパーティーが台無しだ。が、突然「こらぁ!!」という名前の声と共に、一人のサンタクロースが姿を現した。
「「名前!?」」
そこにいた誰もが声をあげるのも無理は無い。赤い服に身を包んだミニスカサンタがそこに立っていたのだから。
その後ろで、ペンギンが自慢げに立っている。
「せっかくパーティーの準備しているんだから、ここで暴れないで!暴れるんだったら私が許さないから。この寒い、冷たい海に突き落とすわよ?」
名前の顔は本気だった。だが、そんな恰好で言われても少し説得力に欠ける。けれども、この服の効果は絶大のようで...。
不機嫌だったローが嬉しそうに名前の傍へやってきた。
「クク、可愛いじゃねぇか。」
悪そうな笑みとともに、名前にキスを落とす。ハートの海賊団、赤髪海賊団の視線が集まる中、「んっ!」と名前の小さな声が静かに響いた。
「もう!ロー!!こんなところで止めてっ。み、みんな見てるじゃない。」
「だからだ。名前は俺のもんだって言っておかねぇとな。」
みんなが驚きを隠せない中、これに怒りを露わにする男が一人。血相を変えて、二人の間に入り込む。
「ロー、なんてことするんだっ!!名前、こっち向けっ!」
「へっ?」
シャンクスはローに背中を向けると、名前の頬に手を当てた。そして再び響く小さな名前の声。ローの目が大きく見開かれた。
「んっぁ。」
「シャンクス、お前...っ!」
「消毒だ。」
ベーっと舌を出して、ローのほうを睨みつける。名前にキスをされたこともそうだが、名前を抱き寄せるために腰に回された腕に目がいく。
ローの怒りは限界に達していた。
「名前に触るな。」
「俺の娘だ。触って何が悪い!」
「娘にはそんなことしねぇよ。覚悟はできてんだろうな。」
“ROO「いい加減にしろっ!!」
ガツン!ガツン!!と大きな音が響き渡る。次の瞬間には、シャンクスとローが腹部を抑えていた。
フワリと舞う名前のミニスカート。地面に降ろされた足が、二人に蹴りを入れたということを教えていた。
(見えたっ!!)(白っ!)
電気が走ったように身体を跳ねさせる船員たち。四皇とルーキーを蹴る名前に恐ろしさを感じつつも、見えたことに喜びを隠せないのか、顔が歪んでいる。
それに気付いた名前が、彼らを睨みつける。
「何が可笑しいのよ。」
「いや、何もっ。」
「じゃあ、クリスマスパーティー始めたいしさ。みんな早く残りの用意しちゃって!」
「「はいっ!!」」
先程までとは正反対の笑顔。そこから、名前がとてもパーティーを楽しみにしていたことがうかがえた。ローは納得がいかないと言った顔をしていたが、名前が嬉しそうに笑っているため、もう何も言おうとはしなかった。
ただ、シャンクスが近づけないようにだけ名前の横にぴったりと寄り添った。
「なァ、名前。もうシャンクスには近づくな。」
「どうしたの?ロー。」
「いいから。あいつには近づいて欲しくない。」
「大丈夫だから。私が愛してるのはローだよ。」
そうは言われても、今日の名前は可愛すぎる。他の男に見られることさえ、いい気がしない。そんな無防備な格好で歩かないでくれ。