<嫉妬>

しおりを挟む

|



「女ヶ島ー...よかったなァ。」

「あァ。いい匂いだった。」

「「特に海賊女帝の美しさ!!」」

今日の天気は快晴。
暖かい気候ということもあり、ハート海賊団はしばしの休憩。
ペンギンとシャチは甲板に寝そべっていた。
二人は頬を染めながら鼻の下を伸ばし、つい先日出発した女ヶ島の女たちの話をしていた。

その傍らで昼寝をするベポにもたれ、ローは本を読んでいる。

「俺、石にされてもいい。」

「俺も....。」

二人は向き合うと頷き合い起き上がりその場に座り、ローを見る。

「「船長。」」

それに気付いたローは、本のページをめくりながら返事をした。

「なんだ?」

「「船長も海賊女帝、可愛いと思いますよね!?」」

二人のその真剣な表情に、ローはそっと読んでいた本を閉じる。
そして少し遠くを見つめて考えたあと“確かにいい女だった”と答えた。

思いがけない答えに、ペンギンとシャチの二人の話はさらに盛り上がる。

「あー女...。」

「抱きてェなァー...。」

「なら次の島で女を買うか?」

「「まじっすか、船長!!」」

「クク...久しぶりに愉しむのも悪くねェ。」

ローは視線を船内へと向ける。
パタパタパタ...と走る音をローは聞き逃さなかった。
その音を聞いて小さく笑う。

「どうしたんスか?船長。」

「いや...。」

さて、あいつはどうでるか。本当は海賊女帝には興味はない。というより、女に興味がない。
ただ一人を除いては。


「「船長も海賊女帝、可愛いと思いますよね!?」」


そうあいつらが言ったとき、扉のすぐ傍に名前がいるのが見えた。会話の内容を聞いてまずいと思ったのだろう。
あいつの足が止まった。

少し虐めてみたかった。名前の嫉妬する姿が見たかった。
いや、嫉妬させたかった。そのほうが正しいか。

頂上決戦のあの日から、あいつはどこかおかしい。赤髪、あの男を見たからか?


「ん、ぁ...イクっ、また、イッ...。」

「名前、もう...っ。」

「イク!イっ....あぁ......!!!!」


あの夜も、つい先日のあの夜も俺に抱かれた日は必ず“シャンクス”と寝言を言う。
特に最近、毎日のように聞かされる。あいつは気付いていないようだが。

他の男の名を何度も。

ただ俺だけを感じていればいい。
俺のことだけを考えていたらいい。

それは少し狂愛じみた “独占欲”


(ローの馬鹿!確かに女帝は綺麗だったけど...っ。)

久しぶりに愉しむのも悪くねェ、確かにローはそう言った。
名前は目線を落とし自分の身体をじっと見つめる。

この身体に触れた手で、他の女に触れる。同じように抱きしめてキスして...。
そう考えると心がチクチクと痛む。



だが、ローの女でも無い自分には彼を止める権利は無い。
かく言う自分も、シャンクスのことを考える日々が続いている。

他の女を見ないで、などただのワガママだ。
ローへの不満は隠そうと思っても、隠しきれるものでは無い。
不意に出てしまいそうな言葉を発しないように、名前はローとの距離を取った。

積極的にペンギンたちの輪に入り、みんなで会話をし2人きりなる時間を減らす。

それをローは横目で見ていた。

しかし、夜は来るもので、船長室が自分の部屋代わりの名前はローと2人きりになってしまう。

(さっさと寝てしまおう...。)

ローが戻って来る前に寝てしまえば、話す機会も無い。
ぎゅうっと毛布に包まり壁の方を向く。しかし、どれだけ寝ようと目を瞑っても眠りにつくことができない。

(...寝れない。早く寝なきゃローが戻ってくるのに。)

名前はもう一度、毛布を強く握った。

(全部ローのせいだ。あんなに嬉しそうに言うから...。)

ふと、名前の頭によぎる。
一体自分は、ローとシャンクスどちらが好きなのか。

何故いま自分は、こんなにもローのことばかり考えているのか。


「名前は何も考えずにただ俺の側にいろ。」


あの時の光景が頭の中で蘇る。

抱きしめる腕の力。ローの温もり。
自分の頬が赤くなるのが分かる。

いつだってローは自信満々で、熱い何かを持っていて強く惹かれているのは確かだ。
しかし、それはシャンクスも同じ。

ただローと比べたらシャンクスの言っていた通り、パパに近い好き、な気もする。

(あーもーっ!私って一体...。)

この自問自答を今まで何回繰り返しただろうか?
答えは未だ出ない。





しおりを挟む

8 / 33
|

目次へ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -