<ようこそ!ハート海賊団へ>
「ちょっと何これ......。」
着替えとして中に入っていたのは、今にも下着が見えそうなミニ丈のナース服だった。ナースキャップまで丁寧に入っている。
そして、太ももを隠す長さのヒョウ柄のブーツ。
「ペンギンめ......。」
他に着る服も見当たらないのでそれを着ることにしたが、皆の前に出るのが恥ずかしかった。
何よりもローに見られることが、嫌で仕方ない。スカートの裾を抑えながら、食堂のほうへ向かう。みんなの姿も見当たらない。
どこか島へ飲みに行ったのだろうか?どこの海賊船も同じなんだな、と名前は思った。
「ロー?入るよー...。」
(名前ちゃん、来た!)
(ちゃんと着たかなぁ〜...。)
(どんなヤツ、用意したんだよ?)
(それはお楽しみ!)
恥ずかしい気持ちを抑えながら、恐る恐るドアを開く。
パンッ!パンッ!!
「きゃ....っ!」
開けるなり聞こえた爆音。目の前にヒラヒラと、色とりどりの紙が宙を待っている。
「「ようこそ!」」
「「船長率いるハート海賊団へ!!」」
あまりの突然の出来事にびっくりする。目の前にはたくさんの食事と、船員全員の満面の笑み。その端のほうで一人澄ました顔のロー。
「「「「可愛い〜〜っ!!」」」
「おおー似合う!!」
「ペンギン、ナイスチョイス!」
「へ?.......あ。」
自分を見つめる鼻の下を伸ばした男たちの視線に気付いて、今の自分の服装を思い出す。
「ペンギン!なんでこんな...っ!」
「知らないのか〜?限られた者しか見ることのできない美人ナース集団の制服だぜ?手に入れるの苦労したんだから。」
「普通でいいよ!普通で!」
「歓迎パーティーなんだ。普通じゃ面白くないだろ?」
うんうんと後ろで頷く男たち。
「似合ってるぜ?」
「ですよね!せんちょっ?」
そこにいる人間の視線が、全部ローに注がれる。
「.........ふん。」
(ふん、だってさ...っ!!)
(これは、船長喜んでるな!)
シャチは袋から何かを取り出すと、ローの元へ駆け寄った。その顔はどこか嬉しそうだ。
「船長もこれ着て下さいよ!」
「あァ?」
少し怪訝そうな顔をしながらも船員たちの思いを汲み取ったのか、ローは手渡された服の袖に手を通す。
「...ただの白衣じゃねェか。」
「船長と言えば、やっぱね?」
「なんか色気が倍増...。」
「かっけー!さすが船長!!」
様々な声が飛び交うなか、ローは立ち上がると名前のほうへと歩き出す。
美男美女の二人の姿に船員たちは皆、心を奪われる。誰もが息を呑んだ。
「フフ、名前...お前がナースなら医者の言うことは聞かねェとな?」
「別に私はナースじゃ...っ。」
「ここにあるものは全て、こいつらがお前のために用意したんだ。楽しんでやれよ。」
え?っと辺りを見回す。すると皆が照れ臭そうな顔をしながら、でも、どこか誇らしそうにローの後ろで立たずんでいた。
「さァ、始めるか。」
ローの掛け声で、名前の歓迎会が始まる。
「「よーし!飲むぞォォ!!!」」
「...名前。」
船員たちが騒ぐ中へ行こうとすると、ローに呼び止められた。初めて見る彼の白衣姿に、ドキドキを隠さずにはいられない。
医者だから白衣。それは間違っていないのだが、ローが着るといつも以上に、なんとも言えない色気を感じる。
「こっちへ来い。」
そう言いながら、ローは側にあった椅子へと腰を下ろす。名前はグイッと引っ張られ、ローの上に座る形になった。
「ここで飲めよ...?」
耳元で聞こえる声。耳から首筋にかかる息。これだけで名前の顔は真っ赤になった。
「なァ?」
ペロっと舐められる首筋。名前の身体がピクリ、と反応する。
「〜っ!!このエロ医者!!!」
名前は逃げようとしたが、後ろから手を回されてそこから抜け出すことができなかった。
周りに船員がいることを気にも止めず名前を虐めては、その反応を楽しんでいた。
「これじゃ楽しめないんだけど...。」
「俺は楽しいがな。」
「私は楽しくない!」
それもそのはずだ。美味しそうなものが目の前に、広がっているのに、お預け状態。離してと訴えてもローの機嫌が良くなるばかりで、全く意味が無かった。
そこへペンギンとシャチが、たくさんの甘い物をお皿に乗せて、ローと名前の目の前に現れる。
「これ、食べな?」
「船長〜。ここでイチャつくの辞めて下さいよ...ほんとに。」
呆れたようにペンギンが言う。
「イチャついてねェよ。」
「イチャついて無い!」
........っ!!
名前は思わず後ろを振り返る。
するとそこには嬉しそうに笑うローがいて、名前はドキっとした心を隠すように、虐められてるの!と大きな声で返した。
「ハハッ。」「プッ。」「クク。」
そのあまりに大きな声に、一斉に三人が笑い出す。
普段こんな風に笑うことのないローを見て、ますます名前は怒りだした。
「何よ!そんな笑うこと無いのに!もー飲んでやるっ!!」
「あ、名前ちゃん...っ!!」
ローの元から抜け出した名前はペンギンの静止も無視し、テーブルのお酒へと手を伸ばした。その見なりには似合わない勢いで口へと含んでいく。
「あーあ...船長のせいですよ?」
「ちっ、手間のかかる。」
″Room″
円が発生すると、ローは手の形を変化させる。
するとローの手にあった皿と、名前の位置が入れ替わった。再びローの元へと戻ってきた名前の手にある酒を取り上げる。
「やめろ、飲みすぎだ。」
事の状況を把握できていなかったのか一歩遅れてから、名前が酒を取り上げられたことに気付く。
「返して!」
「駄目だ。」