<理由>

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「俺はお前に興味がある。」

「え...?」

驚く名前を他所に、ローは言葉を付け加える。

「そのアザ、どうした?」

その言葉を聞いた名前の目が、一瞬だけ大きく開いた。この男は何か知っているのか?流行る気持ちを押さえようとするが、その気持ちとは裏腹にドキドキと鼓動が速くなる。
ローは名前から身体を離し、机のほうへと向かって行った。

「あなたは何かを知っているの?」

しかし、ローは何も答えない。ただ無言で机に置かれた本を閉じ、片付けていく。
自由になった名前も重い身体で起き上がる。そして整えられた服をもう一度自分でも整えた。
事を思い出し、頬が紅くなる。それを隠すように名前は俯いた。

「言い忘れていたが...。」

しかし、その後ローの発した言葉のせいですぐに顔をあげることになる。

「今日からお前はこの部屋で寝ろ。」

「どういうこと!?トラファルガー...あなたはどうするの?」

「さっきみたいに名前で呼べよ。」

また鳴くか?とローは笑みを浮かべる。

「..........っ。」

彼の瞳に引き込まれそうになる。どうしてこうも彼は、意地悪そうに微笑むのだろうか。シャンクスとは真逆のようなローに、名前は翻弄されっぱなしだ。

「ここは俺の部屋だ。」

「空き部屋とか無いの!?」

「ねェよ。別に支障はねぇだろ」

そう言ってローは上着を脱ぐ。無駄な脂肪の無い身体。海賊船に10年もいたため男の身体は見慣れていたが、綺麗に鍛えあげられたその筋肉は思わず見惚れてしまうほどだった。

「何だ...?」

名前はハッとする。そこで初めて、食入るように見つめていたことに気が付いた。その事実を否定するかのように思わず顔を背ける。

「こっちへ来るか?」

「バカじゃないの...っ!なんで私が。」

「ククッ、好きにしろ。」

柔らかな毛布が宙を舞う。

「使え。」

名前はそれをキャッチすると、部屋の外へと出るためにドアノブに手をかけた。

「いいのか...?あいつらも男だ。女に飢えてるかもな...。」

「.......っ!!」

武器の無い今、自分の身を守るには限界がある。ローの言うことを聞くことに不満はあったが、仕方がない。ドアノブにかけたその手を離すと、名前はそっと部屋の角へ移動し腰をおろし、毛布にくるまった。





あいつがあそこへ腰をおろしてそろそろ5分くらい経ったか?スースーと寝息のようなものが聞こえる。

「もう寝てやがる...。」

様子を見に行くと、毛布に顔を埋めて小さくまるまった名前が寝息を立てていた。
ローは名前の長い髪に触れる。
チラッとその髪の間からアザが覗く。これに関わったのが吉とでるか凶とでるか。

「面白いものを手に入れた。」

それにしても...どこかあいつに似ている。こいつの顔を見ると、嫌でも無意識のうちに思い出す。

今もどこかで生きているのだろうか?生きていても恨んでいるだろう。全てを奪ったのは俺だ。

「ちっ...!!手間かけさせやがって...。」

毛布にくるまった名前を抱き上げる。

軽いな。だが、女の割には脂肪が少ない。適度に鍛えられた身体付きだ。ただの街の女じゃねェな―――。
それにアザのこともある。誰かこいつの後ろにいるのか?あの時も冥王の側にいた。ただの偶然か?それとも...。

まぁ、いい。それも時期に分かるだろう。楽しみを取っておくのも悪くねェ。

「楽しませてくれよ...?」

そっとベッドの上におろす。アザを持つ呪われた人魚。その姿は世の男を魅了する...か。アザの模様は古文書に描かれたものと、確かに同じだ。ただ目の前にいるのは人魚ではなく人間だが...。

ローは静かに名前の隣へ座る。そして、その寝顔を見つめた。

「魅了する、ねぇ......。」


トクンーーーーーッ

その寝顔に引き込まれたかのように。名前を起こさないよう、柔らかなその唇にキスをした。





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