<愛してる>

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「入るぞ、まだ起きてるか?」

そう声をかけながら、名前の部屋の扉をあける。明かりのついていない、月明かりだけで照らされた部屋の中で名前の泣き声だけが聞こえた。今、泣いているのは自分のせいだと心が痛くなった。

「来ないで!」

「そう言うな。俺が悪かった、少し話をしよう。」

「......っ、話?」

月明かりだけを頼りに、名前の寝ているらしいベッドまでゆっくりと歩く。名前はうつ伏せになり、枕に顔を埋めて泣いていた。

「そのままでいいから聞いてくれ。」

ベッドに腰をおろすと名前の頭を撫でながら、シャンクスは話を続けた。相変わらず名前はヒックヒックと、声をたてながら泣き続けている。

「お前がこの船に乗ったのは今から10年前だったな。あの頃も可愛いかったが、だんだん綺麗になっていった...。数年前...自分の心に違和感を覚えた。」

俺以外の男と楽しそうに話す姿を見て、嫌だと思う自分がいた。それからだ。自分の気持ちと葛藤する日々が続いたのは。

(シャンクス?何を言ってるの?)

頭を撫でられ落ち着いてきたのか、名前の泣き声が少しずつ小さくなっていく。シャンクスの名前を撫でる腕が止まった。しばらくの間、静かな時が流れた。

「俺はお前を愛している。」

その言葉にびっくりした名前がパッと顔を上げた。するとそこには少し顔を赤らめる、見たこともない顔のシャンクスがいた。
名前が驚いた顔をしながら、シャンクスと向き合うように座ると次の瞬間、ぎゅっと抱きしめられる。

「本当は名前を俺のものにしたい。」

「それなら...。」

「お前の言いたいことも分かる。だが、聞いてくれ。」

名前は今、口から出そうになった言いたかったことを全て飲み込んだ。自然と涙も止まっていた。

「俺は一通り世界を回った。それでもまだ知らないことがこの世にはたくさんある。」

「......うん。」

「名前はこれから世界を知るんだ。楽しいことも辛いことも全部。いろんな可能性があるんだ。」

名前はじっと静かにシャンクスの腕の中で、その話を聞いていた。ドキドキと彼の鼓動が伝わってきている気がした。

「俺はその可能性を潰したくは無い。
だか....「だから、私の」」

「気持ちには応えられない、でしょ?」

シャンクスが抱きしめるのをやめ、名前の肩に手を置いた。2人の身体が離れ、名前は両手でシャンクスのシャツの胸元あたりを握る。その手にきゅっと力が入った。

「どうしてもダメなの?」

「そんな顔で見るな...こら、パパを困らすんじゃない。」

そうシャンクスは笑ったが、いつもならパパって何!と笑う名前も、この時は黙ったままだった。
彼のことだ、私のことを考えてくれた結果なのだろう。シャンクスは決めたのだと、名前は悟った。

「......分かった。
もう困らせたりしないよ。」

「すまない.....。」

「謝らないで?」

大海賊の大頭とは思えない顔のシャンクスに、名前はおでこをコツン、とくっつけた。彼の頬が少し紅くなった。

「ふふ、それでも四皇?」

「......うるせぇ。」

「一つだけ約束してくれる?」

「なんだ?」

もし世界を見て回っても、私に好きな人がいなかったらその時は......

「ううん、やっぱなんでもない。」

この先の話なんて分からないもんね。私にもシャンクスにも、他に好きな人ができるかもしれない。シャンクスが私のことで、悩んでるのを見るのは嫌だ。

「言いたいことがあるなら、言ってもいいんだぞ?」

「ううん。なんでもない...私がどこにいても助けてね。絶対に守ってね。」

「ああ、もちろんだ。」

明日から頑張るから、今日だけはずっと側にいたい。そんな思いから自然に言葉が出る。

「パパ...今日は一緒に寝よう?」

パパとは呼びたくなかったが、シャンクスを困らせないためにも今はそう呼ぶことにした。
名前はベッドの端によりマットを叩きながらココ、ココとシャンクスを呼び寄せる。

「......仕方ないな。」

そうやって苦笑いする彼が愛しかった。2人でくっつきながら目を瞑った。

シャンクス、大好きだよ。諦めるなんてことできるのかな?今はまだ好きでいることを許してね。私自身の問題のこともあるし、少しずつ外の世界を見て回るから。

「あったかい......おやすみ。」

「ああ。」





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