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激しさを増す攻防。宙を飛び交う斬撃。刃がぶつかり合う冷たい音。
本当の父親のような存在が、大好きな男に刻んでいく無数の傷。

それを見るのが辛くて、名前はずっと目を閉じていた。それでも音は聞こえてくる。
ローの痛みを受けた時の声が、名前の耳を刺激した。

「ロー、いつまで続けるんだ?結局2年前と何も変わらないぞ。」

「ハァハァ...っ、クソ!」

ボロボロになりながら、それでもローはシャンクスに刃を向ける。その姿は名前だけでなく、シャンクスの心にも響いていた。

(熱いところは変わってないな...。)

この戦いはシャンクスにとっても辛いものだった。
ローは小さい時、少しだが一緒に過ごした仲。あの頃から少し生意気なところがあったが、それでも可愛い奴だ。
そんな男に今、自分は刃をむけている。

だが、名前の父として弱い男には名前を任せることはできなかった。

“カウンターショック”

「...まだだ。」

(そうだ、もっと来い。)





この2年、頑張れば名前の心を取り戻せると思っていた。
だが、名前に接すれば接するほど、どれだけ名前がローを好きなのかを知ることになった。

ローと言う名を直接聞くことは日に日に減っていったが、名前は毎日新聞をチェックしていた。

それは離れているローのことを少しでも知るため。
ローの懸賞金が上がるたびにリストを見て、微笑んでいた名前をシャンクスは知っていた。
それに応えるかのように、名前の懸賞金も上がっていく。

シャンクスにとって手配書は、お互いの存在を伝え合う手段のようにも思えていた。

鏡を見ればピアスに触れ、微笑む。それが嫌でシャンクスは新しいピアスを名前にプレゼントしたことがあったが、名前はいろいろと理由をつけて一度も外すことは無かった。

そんな日々を過ごす中で、シャンクスにある気持ちが生まれた。

名前の幸せが俺の幸せ。

向き合おうとする前の自分に戻る。名前の父親として存在し、世界が平和になるように時代の流れを見守る。
それが自分の役割なんだと...。





「もう、終わりか?」

地面に伏せるローにシャンクスが声をかけた。

「..........。」

「ロー、もう止めて。シャンクスには勝てない...。もう貴方が傷つくのを見たくない。」

名前はいてもたってもいられなくなり、ローの元へと駆け寄る。
息も切れ、血を流しているボロボロのローに対し、シャンクスは全くの無傷。かすり傷一つなかった。

「...これは俺の問題だ。」

こんな状況にも関わらず、ローはプイっと顔をそむける。
その時、甲高い音とともにローの頬に痛みが走った。頬のすぐ横にあるのは名前の手のひら。

「一人で何でも背負わないで!!」

「名前...?」

「“hurt”
意味は痛みってローは私に言った。なんでローが痛みを背負ったのか、私には分からないけど...。」

ローの背中に腕が回される。

「もう一人じゃないでしょう?」

顔についた血を拭き取り、ロー負った傷にそっと手を当てる。

「私にもローの痛みを背負わせて。」

二人の間に存在する“heart”
ローの身体に刻まれた“hurt”が今この瞬間、“heart”に変わる。

痛みから愛へ。

トクンーーーーー。

こぼれおちた名前の涙がローの身体に触れた。すると、どうだろう。

「ロー、傷が......治っていく。」

全てを癒す人魚の涙。
ローの傷が治ったのは、名前の力が働いたからだった。

「ククっ。」

「ロー?」

「俺がお前に守られるなんてな。」

そう言って、ローはもう一度その場に立ち上がる。顔付きが今までと違っていた。

「もう大丈夫だ。これで...終わりにしてやる。」

キッと顔を上げ、シャンクスと睨み合うロー。彼らは同時に宙へと飛び、刀を交えた。

そして地面に降り立ったあとも、刀が重なり合う。空を切り裂く音が激しい。
一旦二人が離れたあと、ローは指を上に向けシャンクスの足場を変形させる。
その間にも森のほうから倒れた木々を呼び寄せ、斬撃を加えたあとシャンクスに向けて飛ばした。

「.........っち。」

この時、シャンクスが初めて戦闘の中で舌打ちを漏らす。
決着のときが刻々と迫っていた。

二人の距離が再び近くなる。その時、「ローッ!!!!」と辺りに名前の大きな声が響いた。
それを聞いたシャンクスに一瞬の隙が生まれてしまう。

砂に足を取られ、バランスを崩したところをローの刀先がとらえた。
それはシャンクスの頬に傷を付け尚且つ、変形する足場がシャンクスに膝を付かせた。

最後の一振り。
それをシャンクスは刀で受ける。

「ハー...、参った。」

頬から流れる赤い血。膝を付いた状態で攻撃を受けたシャンクスが、溜息混じりに笑った。

「ロー、強くなったな。...お前にやるなら文句は無いさ。」





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