<賞金首>

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次の日の出来事だった。

名前はいつものように、いつもの場所で新聞を広げようとした。その時、一番最初に目に写り込んだもの...。

「あぁっ!!!!!」

船の中まで聞こえそうな大きな声に、船員たちがどうした!?と慌てて名前のところへ集まる。

「どうしたんだっ!?」

一番最初に名前のところへたどり着いたのは、血相を変えたシャンクスだ。
新聞を見て呆然と立ち尽くす名前に、何があった?と声をかける。
他の船員たちも次から次へとその場に集まってきた。名前を取り囲む。

「みんな...これ見て?」

片手で新聞の一面を見せつけ、もう片方の手で一枚の紙を見せる。

「そ、それは。」

「賞金首になっちゃいました...。」

「「「ええーーーー!!!!」」」

新聞の見出しは、こうだ。

“世界一の美しい人魚現る!?”

「ちょっと貸せ!」

シャンクスが名前から新聞を取り、記事を読み上げる。

「えー...。海賊を倒し、少女助けた謎の人魚。しかし彼女は四皇赤髪の船に戻った。赤髪の女だと言う可能性も否めない。我々海軍は、人魚の強さ、背景、様々な要因より人魚を危険因子と捉え、賞金首にすることを決定した、だと?」

もう一枚の紙を眺める。

「賞金は...1億5千万ベリーっ!?」

シャンクスの紙を握る手が微かに震えている。船員たちも驚きを隠せないようで、ざわざわと甲板はざわめいていた。

「いきなりの億越えかよ...」

「嘘だろ?」

「本当なんですか?お頭。」

「あぁ。」

そう言って新聞と紙を見せた。その顔はとても嬉しそうだ。

「ここ見ろよ。名前は俺の女だって書いてある。」

「いや、お頭。ついさっき...っ!」

「可能性も否めない、でしょ!?私は別にシャンクスの女でもなんでもない。」

「まー、そう怒るな!この写真だって可愛く撮れて...。」

ここでシャンクスはあることに気付く。
リストの写真は確かに名前だ。だが、写真に薄く写り込んだ下半身。
それは明らかに人魚そのもので、改めて記事を見ると人魚の文字もある。
あの時、泳ぐ速さについてひっかかったことが核心へと変わった。

「なァ、名前。少し俺の部屋に行こう?」

「別にいいけど...。」

「お前らは持ち場に戻れ!」

シャンクスがそっと名前の腕を、自分のほうへ引いた。

(この感じ...。)

名前は軽く下を俯く。久しぶりのその感じに、名前の心は小さく動いた。





「俺に隠してることないか?人魚ってどういうことだ。まさかなれるように...なったのか?」

船長室にたどり着いてすぐに、シャンクスが名前に問いかける。

「隠すつもりは無かったんだけど...ビックリしないでね?」

名前はそう言って目を閉じた。シャンクスは目にうつる光景を、ただ茫然と見つめていた。

「......綺麗だ。」

あまりの美しさに心を奪われる。まあ、最初からシャンクスの心は名前に向けられていたが。
見惚れたシャンクスは、明らかに言葉を失っていた。

「レイリーから私のこといろいろ聞いてるんでしょ?」

「あぁ。」

「どうしたらいいと思う?」

「あぁ...。」

返ってくるのは生返事ばかりだ。心ここに在らず、この言葉がピッタリだった。

(全然聞いてない。)

あの時ローは...、そんな思いが名前の心をかすめた。
だが、どんなに思っても彼はもう側にはいない。きっと今も、この海のどこかにいるのだろう。

(新聞見たかな...?)

賞金首になった自分をローはどう思うだろう?目立つことはするな!と怒るだろうか。

だが、一目でもいい。リストの写真を見てくれたなら...。
まだ外していないピアスに気付いてくれたなら。

そうなることで伝えることの出来なかった思いが伝わればいいな、と名前は思った。





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