<ぎこちない関係>

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「「「名前、お帰り」」」

「今までどこにいたんだよ?」

「大丈夫だったか?」

たくさんの心配だったという声が、船の上を飛び交う。

「...皆、ただいま。それはまたちゃんと話す。」

その中を歩き、名前はシャンクスの元へと歩いた。
ずっと会いたかったシャンクス。ローがすぐそこにいると分かっていても、自然と笑みがこぼれる。
あと数メートルの距離。名前はシャンクスに向かって一直線に駆けだした。

「ただいま。シャンクス。」

「ああ、お帰り。」

名前を強く抱きしめるシャンクス。

「もっと早く見つけてやれたらよかったんだが。...ごめんな。」

「ううん、ありがとう。心配かけてごめんなさい。」

その光景を後ろのほうで、ハートの海賊団と共に見ていたロー。彼は何も言わなかったが、いつもにも増して周りの空気は冷たく張りつめている。

「船長...?」

ペンギンがそれに気付いて、ローに声をかけたが返事はなかった。

シャンクスにぎゅうっと抱きしめられている名前の耳元で、キラっとローとお揃いのピアスが太陽の光を反射して輝いていた。
シャンクスとローはそれを見つめる。





それからすぐあとのことだ。名前との再会を済ませたシャンクスは、船の上を見渡すとニッと笑った。

「全員揃ったな!始めるぞ、宴だァ!!!」

それに応えるようにおぉー!と男たちの声が響く。
シャンクスはおい!とハートの海賊団のほうを見て言った。

「お前らも飲め!」

ハートの海賊団からすれば、ローの命令で船に乗り込んだだけだ。やはり敵に変わりは無い。赤髪海賊団の船員達は名前との再会に心弾み浮かれているが、ハート海賊団の船員達は皆、複雑そうな顔付きをしていた。

(赤髪だぜ?本物の...。)

(俺たち一体どうなるんだ?)

不安そうな表情でローのほうを見る。それに気付いたローは一言だけ、彼らに向かって発した。

“適当に過ごしていろ。”

「...そんな。」

落胆するペンギンの肩を、グラスを持った名前がトントンと叩く。

「私が言うのも変なんだけどさ。みんないい人達だから...。今は飲んだり食べたりして?」

「名前ちゃん...。」

そう言って名前は皆にグラスを渡して回る。





皆に渡し終えた頃には、シャンクスとローの姿はそこにはなかった。

二人は船の中にいた、誰もいない暗い空き部屋。

「レイリ―さんから聞いたときは嘘だと思っていたんだがな...。どうして名前を船に乗せた?」

「気まぐれだ。」

「ハハ!まァ...大体の見当は付く。だが俺が気になるのはそれよりも。」

シャンクスはじっとローを見る。嘘をつくなよ、そんな意味を込めた目だ。

「名前とはどんな関係だ?」

「見れば分かるだろ。」

「はぐらかすなよ。あいつの耳で光ったピアス...。」

「俺に聞くよりも本人に直接聞いたらどうだ?」

ローは、にやりと微笑む。その挑戦的な笑みは、シャンクスの心を確実に刺激した。

「名前は俺のもんだ。返してもらう。」

その言葉と共にローに向けて、シャンクスの覇気が当てられた。さすがのローもこの距離で覇王色の覇気を受けると、立っていることは可能であっても身体の末端部分に力が入る。

「断る。」

そうローは答えたが、シャンクスはその状態を見て若きルーキーにトドメを刺すかの様に、冷たい言葉を言い放つ。

「お前に名前が守れるのか?俺よりも弱いお前が。」

いつものシャンクスではなかった。
好きな女のため。そうなると例え四皇だ。大海賊団の頭だと言われても、ただの男に変わりはない。
一人の男としてローの前に立つ。

「あの女の子は守れたか?」

「............」

「その反応、忘れていないようだな。」

「それとこれとは関係ないだろう。」

「あるさ。」

その後シャンクスはローに名前について、どこまで知ったのかを問いかけた。お互いがどこまで理解しているのか分からないため、ローは言葉を濁しながらそれに答える。
ローは全てを話し終えたあとならば話は早い、と呟くシャンクスから彼も事情を知っているのだと悟った。

(名前も冥王から聞いた、と言っていたな...冥王と繋がりが?)

目の前にいるのは名の知れた大海賊。冥王と知り合いだとしても、なんら不思議では無い。
だが、時間の流れから考えると名前が人魚になれることは、誰も知らないはずだ。そのことには触れないように話をする。

「名前の力は強大だ。」


今はまだ誰も知らない。だが文献には情報やイラストがいくつも残っている。それを他の海賊達が知るのも時間の問題。
海を支配できる力となると、誰もがそれを狙うことは目に見えていた。

「お前に名前は守れない。」

「...っ!」

シャンクスのより強い覇気に当てられ、ローは一瞬気を失いそうになった。鬼哭に身体を預けるような形で床に片膝をつく。

「く...っ。」

下からシャンクスを見上げる。力の差は歴然だった。あの時と同じく、目の前に立ちはばかる厚い壁。

「認めろ。ロー、お前は弱い。」

今にも噛み付いてきそうな目だが気持ちだけでは無理なことも、この世には沢山ある。

特に強い者が正義の海賊社会では。

(確かにお前は強くなった。だが、名前と向き合うと決めた。強くなったからと言って俺は惚れた女を簡単に渡すような優しい男じゃないんだ。)

「名前から手を引け。」





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