<海賊船>
「知りたかったことは知れた。もう隠す必要は無いもんね。そうよ、私は赤髪海賊団の一員。」
ペンギンは「なっ!?」と声をあげて驚いていたが、ローは眉一つ動かさない。ただ静かに名前を見つめるだけだ。
「どうして分かったの?」
「その太刀筋で確信した。俺はシャンクスと一度会ったことがある。」
本当はそれだけじゃないが...。
*
「船長ー!!大変だ、海賊船が!」
船内から青ざめた顔をして、船員の1人が走ってきた。
「3時の方向に確認しました!こちらに一直線で向かってきます。後10分ほどで肉眼でも見えるかと。」
「海賊の名は分かるか?」
「そ、それが...赤髪...。」
ローがニヤリと笑う。
「噂をすればだな。お前を迎えに来たか...。」
「どうしますか!早く逃げなきゃ。」
「その必要はねェ。」
そうしてる間にも3時の方向に、大型の船の影が見えた。掲げる海賊旗は髑髏の片目に、3本のラインが入っている。
間違いなくシャンクスの船だ。
「クソ、やっぱり向かってくる!戦闘の準備だ!」
ハートの船員達が慌ただしく、甲板へと武器を持って出てきた。初めて見る四皇に皆、緊張を隠せないでいた。中には足が震えている者もいる。
「大層な迎えだな。余程お前のことが大事なのか...クク。」
「シャンクス...。」
*
「お頭!発見しましたよ。トラファルガー・ローの船だ!よかった、潜水してなくて。」
「そうか!見つかったかっ!!」
シャンクスは今までに、見たことのないような笑顔を見せた。
ローの船との距離が近くなればなるほど、久しぶりの再会に緊張しているのか、ドキドキと拍動が激しくなる。
「船、横に付けますよ?」
「ああ、頼む。」
ローとの再会も久しぶりだ。彼らもまた名前と同じように、大きくなっているのだろう。
「楽しみだ。」
*
「戦闘の意思は無い。」
シャンクスはそう伝えて、船の手すりのそばに立った。そこからローの船を見下ろすと、ずっと会いたかった名前が見える。
どこも変わったところは無く、無事だったことに安堵した。
「ロー、久しぶりだな!いまじゃ立派なルーキー...。」
「前置きはいい。」
「ハハ!変わらねェなぁ。少しは再会を喜べ!な!?」
「......ちっ。」
「そう怒るな。名前が世話になった礼をしたい。」
シャンクスが目線を横にやると、ローの船に向けて縄でできた梯子が降ろされた。
「来いよ、飲もう!宴だ。
「船長...どういうことっスか?」
「赤髪が俺たちを船に?」
困惑する船員たちに、ローは手短に説明する。名前は本当は赤髪海賊団の一員で、シャンクスは迎えに来たことを。
「本当なのか...?」
「なぁ、名前ちゃん。」
悲しげな目線が名前に集まる。嘘だと言ってくれ、そんな風に訴えられた視線だった。
「ごめん、みんな...。」
名前は俯いた。重たい空気が流れる。それを断ち切るように、ギシっと縄の紐を登る音が聞こえた。
「船長!?」
「お前らはここにいろ。」
*
ローは船に乗ると、シャンクスの元へと向かう。空気がピリッと張り詰めていて、和やかな再会とはいかないようだ。
「他の奴らはどうした?」
「礼を受ける気はねェ。」
「そう言うな、久しぶりの再会だ。積もった話もある。それに...賢いお前のことだ。選択肢がないことぐらい分かるだろ?」
断れば首が飛ぶ。シャンクスの視線はそれを語っていた。どちらが強いのかは明らかだ。
ローは溜息をついて、手すりのほうへ移動すると、自分の船員たちを見下ろした。
「来い。全員だ。」