「おら、そこで寝てろ」
「うわっ?!」

 ぽーい、と俺のベッドの上に投げると、ぼふん、と音を立てて伊月が転がった。ちょうどベッドの真ん中に着地。投げ方がうまかったのかもしれない。さすが俺。

「え、あの、ちょっと宮地さん……?!」
 ……本当に世話のかかる奴だ。
 起き上がろうとする伊月のおでこをすぐさま指で弾けば、再びベッドの上に転がる。弱い、可愛い。

「本当は、自分の家の布団の方が安心できるだろうし、ゆっくり休めるだろうと思って家に帰すつもりだったんだけどな……。お前があまりにもふらついてやがるから」
「うっ……す、すみません……」
「悪いと思うなら、そこで寝てろ」
 少々乱暴な手付きで、掛け布団を伊月の上へと被せる。勢い余って頭まですっぽりと隠れてしまったが……まぁご愛嬌ということで。
 さすがに息が苦しくなったのか、少しして、掛け布団の端から伊月がちょこんと顔を出した。その様子があまりに可愛くて、頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細める。すげえ抱きしめたくなってきた。

「あんま他人のベッドじゃ落ち着かねぇかもだけど、少しでも寝ればマシになんだろ」
 俺はそれだけを言って、適当に水分補給できるようなものを持って来るために、部屋を出ようとした、のだが。

「いえ、むしろ宮地さんのベッドすごく落ち着きます!宮地さんの匂いがして……安心します」

 なんだこの生き物は。俺にどうして欲しいんだ?襲ってほしいのか?くっそ、俺が全然落ち着かねぇよ!!

 ……もちろん、そんなこと本人に言える筈もなく、ただ小さい声で素っ気なく「そうか」と返すことしかできなかった。
「とにかく、無理して起きてないで、すぐに寝るんだぞ」
「……別に寝なくても、寝転がってるだけでだいぶ楽になってきましたし……俺、宮地さんとお話したいです」
「駄目だ。俺が部屋に戻ってくるまでに寝てなかったら轢く」
「そんな……轢かれても構わないんでお喋りしたいです」
「我侭言ってないで早く寝ろ」

 不満そうな声を聞きながら俺は部屋を出て、台所へと向かう。
 本当に伊月は頑固だ。家に入れてもらえたのを良いことに、このまま起き続けようとしている。どうせ、俺と一緒にいるのに、自分だけ寝ていたら俺に退屈させてしまうかも、とか考えているんだろうが。俺からしてみれば、伊月が無理している姿を見る方が面白くない。

 こうなったら意地でも寝かしつけてやる……!!






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