「これと、これと………あぁ、あとはこれだな」
「あ……は、はい。そう、ですね……?」

 宮地さんの買い物は意外にも早かった。近くのスーパーについてから、宮地さんはすぐに野菜の売っているところへと迷わず向かい、次々と野菜を選び始めた。俺はどうすればいいかわからず、買い物かごを片手に付いていくしかない。

「え、えーと、宮地さん?ちなみに今日の夕食は……」
「カレー」
「あ、カレーですか…」

 確かに買い物かごに入れられた野菜は、ジャガイモや人参等、カレーに必要なものばかりだった。

「カレー粉は家にあったよな?」
「えと、はい、ちゃんと残ってたと思います」
「んじゃ、これで買い物は終わりだな。さっさと金払って帰るか」

 宮地さんがテキパキと食材を選んでいる姿に圧倒されているうちに、買い物は終了してしまったようだ。思わず口から「え……」と声が漏れる。

「どうした?伊月。レジ行かねえの?」
「…あっいやっな、何でもないです!すぐ行きます」

 こちらの顔を覗き込んでこようとする宮地さんから顔を背けて俺はレジへと足を進める。
 ……やばい。今、俺何考えてたんだろう。
 買い物かごを持っていない方の手で口元を覆う。

 ……俺、ちょっと寂しいとか、思った……?

 久しぶりの二人きりでの外出。夕食の材料を買いに行くというのはただの名目で、もしかしたら、このスーパー以外にもどこかへ行って……所謂デートのようなことができるかもしれない、と密かに期待していた。でも、宮地さんの様子を見る限り、一刻も早く家に帰りたいらしい。
 ……まあ、別に一緒に住んでる訳だし……わざわざ外でデートなんてしなくても……。
 はあ、と宮地さんに気づかれない程度に小さく息をつく。


「あ、伊月、これ買い忘れてた」

 後ろから呼び止められたと思ったら、買い物かごに新たなものが加えられた。そこに入れられた物とは。
 イチゴのたくさん乗っているスイーツと、クリームの乗った俺の大好きなコーヒーゼリー。


「デザート、食べるだろ?」
「……全く、宮地さんは」





 あぁもう、本当宮地さんは、ずるい。







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