甘いのはクリームのせいじゃない



「宮地さん、今日の夕食どうします?」

 ソファーの方に向けて声をかければ、寝転がっていたその体がのそのそと動くのが見えた。そこに近づいて、もう一度、宮地さん、と優しく呼ぶと、普段は幼さを感じさせる大きな目が、如何にも今起きました、というように薄く開かれた。その目を覗き込んで、再び名前を呼ぶ。

「……夕飯?」
「はい。何にしますか?」

 俺と目が合うと、宮地さんは一度小さく欠伸をし、上半身を起こすと時計を見た。
 今の時間は午後3時。
 今日は俺も宮地さんも大学が休みということで、起きてからずっと家でだらだらと過ごしていたのだ。とは言っても起きたのは二人とも10時頃。微妙な時間だったため、食パンに少し手を加えてブランチとし、その後はそれぞれ好きに時間を過ごした。宮地さんは、ソファーに寝転がったまま溜めていた録画を消化していたのだが、どうやら途中から寝てしまっていたらしい。
 寝起きでまだ頭が覚醒していないのか、宮地さんは小さく唸りながら目を擦っていた。

「……家になんもねえの?」
「んー、何も無い訳ではないんですけど。宮地さん、インスタントは嫌ですよね?」
「嫌だ」

 あまりの即答に俺は思わず笑いを零す。
 宮地さんは、インスタントがあまり好きではないらしい。どうしても自分で作らなくてはならない状況になってしまった時は、仕方なくインスタントを食べているようだが。少なくとも、俺が家にいる時は、俺が作ったものしか食べてくれない。別に料理が嫌いという訳ではないし、宮地さんがおいしそうに俺の手料理を食べてくれているのを見ると、すごく幸せな気持ちになる……なんて、本人に伝えたら調子に乗るだろうから絶対に言わないけど。

「何かリクエストがあったら遠慮なく言ってください。材料、暗くならないうちに買ってきちゃいたいので」
「……今から買い物行くのか?」
「はい。あ、でもすぐに帰ってくるので。宮地さんは家でゆっくりしてていいですよ」
「………そんなら俺も行く」
「え、あの」

 引き留めようとする俺の声は届かなかったようで、宮地さんは自分の部屋へとさっさと行ってしまった。早速出掛ける準備を始めているらしい。がさがさと準備をする音を聞きながら、俺は溜息を一つ漏らす。
 ……まあ、たまには一緒に買い物に行くのもいいかな。
 最近休みがあまりなかったせいで、一緒に出掛ける機会が減っていた。夕食の材料を買いに行くだけではあるが、共に出掛けられるのを楽しみに思っている自分がいて。気付けば口元に笑みが浮かんでいた。

「伊月、準備できた」
「ちょ、待ってくださいよ、俺まだ全然出掛ける準備できてませんから!!」


 宮地さんに急かされるままに、俺は準備を進めた。











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