ことの始まりは約三日前。
 俺はその日、黒子にとある相談をした。その相談っていうのは……『伊月先輩の気をひくにはどうしたらいいか』というもの。
 黒子には、前々から伊月先輩とのことについて世話になっている。っつーか、俺が伊月先輩のことを先輩としての好き、ではなく、『そういう意味』で好きだ、と自覚できたのも、黒子が関わっていたりする。それもあって、黒子はよく相談に乗ってくれる。一応、結構良いやつだ。
 まぁ、それで今回も相談した訳なんだけど。黒子から返ってきた答えは、どっかの受け売りみたいなものだった。

「男をつかむなら胃袋をつかめ、ですよ」

 実際それを聞いた時、それなら楽勝だ、と思った。
 一人暮らしで、自分でいつも飯を作っているから、料理ならそれなりに出来る。それに、簡単なものではあったが、合宿前にあったカントクの『合宿メニュー試食会』の時、しょうがなく俺も一品作ったら、先輩達から好評だった。もちろん伊月先輩からも。
 だから、今度はもっと豪華なものを……!!と意気込んでいたところに黒子から一言。

「何も特別小難しい技を使って料理しなくても、普段通り、ただ、食べてもらう人への気持ちを込めて作ればいいんですよ」

 ……やっぱり黒子はすげえ奴だと思った。


 とりあえず、難しいことをしなくてもいいことがわかった俺は、すぐにメニューを決めて、材料も買って。準備も整ったところでいざ、伊月先輩を家に呼ぼう、と部活の後声を掛けた。でも。


「あーごめん、ちょっと日向と部活関連で買い物に行く約束してて……」

 ……完全に抜けていた。
 俺の頭の中では、断られるだなんて可能性は微塵も考えていなかった。まさか予定が入ってるだなんて、考えもしなかった。
 だから、この時、焦っていた。眉を八の字にして謝る伊月先輩可愛い、とか思いながらも、かなり焦っていた。そして、そんな俺が、返した言葉は。


「その後でも良いんで、夜、俺の家に来てください!!あ、えっと、伊月先輩一人で!!」





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