僕の大切な
「赤司君」
声が聞こえた。すぐ近くから。小さく控えめな声。この声は……。
「テツヤ、か……?」
目を閉じたまま応答する。しばらくすると、クスりと笑い声がして、「はい」という嬉しそうな声が返ってきた。仰向けに寝転がる赤司の下からは柔らかな感覚。それによって睡魔がまた襲ってくるが、なんとか耐えようと両目を一度強くぎゅっとつぶる。そして、ゆっくりと目を開いた。
「どうしたんだ、こんな朝早くから」
そう言って赤司は上半身を起こして、ひとつ欠伸をした。
そうか、昨日は疲れていて…ソファで寝てしまったのか。
自分のいる場所はソファの上。ソファの柔らかな感触を改めて感じ、これは寝てしまうな、とため息をついた。
ふと、昨日の夜にはなかったものが自分の上にかかっていることに気が付く。
「毛布…?」
ふわふわとした、少しピンクっぽい毛布。それが自分の上にかかっていた。もちろん赤司はそれを見たことはない。つまり、赤司のものではない、ということ。
「僕がかけておいたんですよ」
赤司の考えていたことがわかったのか、そう微笑む黒子をちらりと見て、疑問が浮かんだ。
なぜテツヤがここに…?
寝ぼけていた脳が覚醒し始める。そして、様々な疑問が浮かび上がってきた。
黒子がここにいるわけがない。なぜならここは京都だからだ。黒子の住んでいるところは、同じ本州であるにしろ、東京。遠く離れている。それにいつもなら、しっかり連絡を取って、都合の合う日を確認してから会うのに、今回はなんの連絡もなかった。突然、現れたのだ。
どういう…ことなんだ…?
頭の中で悶々と疑問と戦っていると、目の前の黒子が赤司の顔を覗き込んだ。
「なんで僕がここにいるのか、ですか?」
お見通しだとでも言うように勝ち誇った笑みを浮かべる黒子。…とは言っても、黒子はもともと無表情であるため、赤司がそのように感じただけだが。
「あぁ…なぜここにテツヤがいる?鍵だってかかっていたはずだ」
「鍵…ですか?」
黒子は一瞬不思議そうな顔をしたあと、「あぁ、言ってませんでしたっけ」と言った。
「赤司君、知らなかったんですか?」
「…?何をだ…?」
黒子はズボンのポケットの中を探る。チャリン、という音とともに現れたそれは。
「赤司君の家の合鍵です」
……え?
「…悪い、テツヤ。よく聞こえなかった。もう一度言ってくれるかい?」
赤司の言葉に「いいですよ」と黒子は頷く。そして、丁寧に繰り返す。
「赤司君の家の合鍵です」
…………………。
叫びたい。大声で叫びたい。もう地球上の人間全員に聞こえるくらいの大声で叫びたい。
…なんで勝手に合鍵作っているんだテツヤああああ!!犯罪だろ?勝手に作ったら犯罪なんじゃないのか…?!なぜ当たり前かのように「合鍵です」って言えるんだ?!?!
もちろん心の中の叫びなんて黒子に届くはずもなく。
「ちなみに黄瀬君とか青峰君とか、キセキの世代全員赤司君の家の合鍵持ってますよ」
テツヤ落ち着いてくれ。「持ってますよ」じゃないんだよ。なにそのカミングアウト。突然すぎるんだよ。ていうか僕今日までその衝撃的事実知らないで過ごしてたわけ??
心の中では叫びながら、平静を装う赤司。口の端は若干ひくついていたが。
「そ、そうなのか…」
動揺で声が震えたが、それに気づかれた気配はない。助かった。
「それで…今日はなんで来たんだ?なにか僕に用事でもあるのかい?」
さっきの話は聞かなかったことにしよう。
そう心に決めた赤司は、違う疑問を口にした。とりあえず、今は違う話をしておかないと頭の中がパニックになりそうだった。とにかくふつうの話をしたい。
「用事、というか…」
そう言って目をそらす黒子。
なんだろう、ここにも何か恐ろしいことがあるのか…?
選択をミスしてしまったかと後悔しながら、黒子の声に耳を集中させた。
「とりあえず、赤司君。でかける準備をしてください」
「え…」
「10分くらいで準備を終わらせてください」
何この子自分勝手…!
真顔でいう黒子に、さすがに驚く。突然すぎるよテツヤ…。
でも、特にこの後用事もなかったので、黒子の言った通りにしようとソファから立ち上がる。自分の上にかかっていた毛布を手に取り、「ありがとう」と言って返すと、黒子は嬉しそうに笑った。「今日はこれをつかって寝よう」なんていう黒子の声が聞こえた気がした。いや、大丈夫、聞こえなかった。
「じゃあ着替えるから」
「はい」
そう言ってその場を動こうとしない黒子。いや、「はい」じゃなくて。
部屋を出てもらおうとして言った言葉だったのだが、黒子には通じていなかったようだ。黒子の返答に思わず固まってしまった赤司。そんな赤司を見て黒子は首をかしげた。
「どうしたんですか?早く着替えてください」
「いや、あの…着替えるから、部屋を…」
そこまで言ったところで、黒子は「あぁ」と納得したような表情をした。
「大丈夫です、見るだけで写真撮ったりはしませんから」
「すぐ部屋出て行かないとオヤコロだよ?」
目の前から瞬時に黒子が消えた。というか、すごい勢いで部屋を出て行った。これでなんとか準備を進められる。赤司はこれから何があるのかと一瞬恐怖に身を震わせたが、部屋のドアの前で待っているであろう黒子から逃げるのは困難だと感じ、諦めのため息をついた。なんて言ったっていつのまにか合鍵を作ってしまうほどのやつだ。ほかになにか恐ろしいことをしていても不思議ではない。もはや逃げることはできない。
赤司はもう一度ため息をついてから、着替えを始めた。
準備が終わるまでの間、ドアの向こうから荒い息が聞こえてきただなんて知らない。気のせいだ、気のせい。
自分にそう言い聞かせて、ドアを開けた。
「テツヤ、準備終わっ…た…んだが…」
「…………………」
「何しているんだ」
黒子が、ドアのほうに耳を向けていた。…つまり、部屋の中の様子を聞かれていたのだ。聞かれていた、と言っても、赤司自身、別にやましいことはしておらず、普通に着替えなどをしていただけだったので、偶然だったら聞かれてしまっても構わなかったのだが…。
さすがに意図的に音を聞くこんな変態が相手だと、構わないとは思えない。
「…さぁ、赤司君。出かけましょうか」
何事もなかったかのように手を差し出す黒子に「質問に答えろ」と言いたいところだったが、それに対する答えを聞きたいわけでもなかった。むしろ聞きたくない。
しょうがなく頷いて、手を取った。黒子は赤司の行動に一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに笑顔になって「じゃあ、行きましょうか」と手を引いて歩き出した。
「でも珍しいですね、赤司君が手をつないでくれるなんて」
外に出て、しばらく二人で歩いていると、黒子が突然そんなことを言い出した。
「珍しい…か?手を差し出されたら、無視するわけにもいかないだろう…」
そうつぶやきながら、自分でも確かに、と感じていた。この年になって、誰かと手をつなぐだなんて、しかも男同士でなんて考えられないことだ。それなのに、それをごく自然にやってしまった自分。過去の自分になぜだと言ってやりたくなった。
「…それだけ赤司君が僕に心を許してくれるようになった、ってことなんですかね」
「え…?」
黒子の言葉にまぬけた声をあげた。よくわからず、意味を考えようとする赤司の頭は、黒子の声によって思考停止にさせられた。
「赤司君、この店によってもいいですか?」
「あぁ、別に構わないが…」
黒子が指を指した店は、ごく普通の本屋。ここに何かあるのか、と身構えていると、黒子は本屋に向かって歩きながら、「欲しい本があるんです」と言った。どうやら赤司を連れていく目的の場所ではないらしい。ついでのようだ。
「赤司君、なにか欲しい本はありますか?」
唐突にそう尋ねられた。欲しい本、か…。
少し考えてみたが特に思いつかず、「ないよ」と答えた。それを聞いた黒子は少し残念そうに「そうですか…」と言う。
これはある、と答えておいた方がよかったか…?
そう思ったが、やはりパッとは思いつかなかったため、そのまま黒子と本屋の中に入った。
欲しい本らしきものをすぐに手にした黒子は、そのままレジに向かうのかと思いきや、料理本を立ち読みしだした。
「テツヤ…料理でもするのか?」
「…赤司君は僕が料理できるとでも?」
「いや、なんでもない」
料理が得意ではない、というのは赤司も当然知っている。だからこそ、なぜ料理本を読んでいるのか、と気になった。
…そういえば、テツヤと同じ学校に通っている一人暮らしの男が料理できるんだったか。
ということは、その男へでもあげるのだろうか。「今日はこれが食べたいです」なんて言いながら。考えれば考えるほど、モヤモヤとした気持ちが胸の中に立ち込める。
なんだ…なぜこんなにイライラするんだ…。
赤司は奥歯をぐっと強く噛みしめて、苛立ちをこらえる。
テツヤが向こうで何をしていようがテツヤの勝手だ。僕に口出しをする権利なんてない。
そこまで考えて、ハッとする。これではまるで、恋する乙女の様だ、と。そして、これは恋する乙女の、嫉妬をしている姿の様だ、と。
赤司はもう一度奥歯を強く噛みしめて、ふっと力を抜いた。
…そうだ、テツヤと僕は、元チームメイトというだけだ。今はそれぞれ自分のチームがある。なぜ僕はテツヤにそんなに執着をしているんだ。する必要なんてないだろう。
自分に言い聞かせるかのように心の中で呟く。
「赤司君…大丈夫ですか?」
ふと目の前に現れた黒子。それに驚きと動揺を覚えたが、さっき自分に言い聞かせた言葉を思い出し、いつも通りに微笑む。
「大丈夫だ。テツヤも本は買ったのかい?」
「はい、ばっちりです」
そう言って掲げた袋の中には、最初に手に取った本と先ほど読んでいた料理本が入っていた。それを見て、胸がちくりと痛む。やっぱり、あの男にあげるのだろうか。気になってしまう。
「テツヤ、料理なんてめったにしないだろう?買ってどうするんだ?」
違和感の無いようにたずねる。さりげなく。このきき方なら、きっとすんなりと本当のことを言ってくれるだろう…。そう思ってからまたさっきの言葉を思い出す。
だめだ、またテツヤにその手についての話を…!
もはや赤司にとって無意識だった。黒子について、知りたい。黒子の持つ、その本の行方を知りたい。黒子の気持ちを知りたい。そして…自分の気持ちを、知りたい。
自分の今の気持ちが、赤司にはわからなかった。黒子について知りたいと思う気持ちは、果たしてどのようなものなのだろうか。友達として、なのか。それとも……恋愛対象として、なのか。もし後者であるとするなら、赤司は……。
「赤司君が食べたいものを作ってあげますよ」
黒子の声に考えていたことはすべて吹き飛んだ。黒子の言葉に嬉しさを覚えた。黒子の笑顔に幸せを感じた。
あぁ、やっぱり僕は。
テツヤを好きになってしまったのか。
本屋を出た後も、二人は様々な店を巡り続けた。店の前を通るたびに「買いたいものがあるんです」と言って店の中に入っては、「欲しいものなにかありますか?」と尋ねてくる。欲しいものなんて特になかったため、赤司はひたすらに「ない」と答え続けた。……十軒を過ぎたあたりからは黒子の方からおすすめの商品を持ってくるようになったが。さすがに文房具屋ではさみを持ってきたときは、素敵な笑みを黒子に向けた。
テツヤはいったい僕にどんな印象を…。
そうため息をつくと、また目の前を歩く黒子が振り返って指を指す。
「ここに入りたいです」
さすがに、赤司も疲れが出ていた。朝食を食べていないし、約二時間ほど歩き回っているし、黒子にだけに持たせては悪いと、お店で買ったものの入っている袋を持っているし。
なにより、さっき気づいてしまった黒子への気持ち。それを意識してから、黒子の何気ない行動にも反応してしまう。本当に心臓に悪い。
「ごめん、テツヤ。朝からいろいろお店まわってるけど…目的地はどこなんだ?」
今まで巡ったお店、どこも本当の目的地ではないことには気づいていた。朝早くからわざわざ家を訪ねに来てくれた黒子。それには理由があるはずだ。そろそろ、目的を教えてくれたっていいころじゃないか。
そう考えて立ち止まる赤司に黒子は微笑んだ。
「大丈夫です。ここが最後なので」
そう言われて、やっと最後かと黒子の指で示されたほうを見る。するとそこに店など建っていなかった。そこに建っていたのは………。
「…僕の家じゃないか」
入りたい、と言われても。赤司の家なんて、朝、すでに一回訪れたはずだ。それに、合鍵だって……いや、それについては忘れておこう。
「早く入りましょう」
ぐいぐいと袋を持っていない赤司の右手を引く黒子。戸惑いつつも黒子にひかれるがままに家の扉の前まで連れて行かれる。黒子は視線で赤司に開けるように促してきた。
いったい、テツヤは何がしたいんだ……。
赤司は鍵をポケットから取り出し、穴に差し込む。回転させるとガチャリ、と鍵の開く音が聞こえた。
と、同時に、中からガッシャーンという大きな音が聞こえた。
…………………え?
隣にいる黒子を見る。黒子は頭を抱えていた。なんだ、どういうことなんだ。
赤司は混乱したまま、鍵を抜き、ドアノブに手をかける。…ちなみに、先ほどの何か割れるような音がした後から、ずっと家の中が騒がしい。人のしゃべり声も聞こえる。
嫌な予感しかしない……。
中で何が起こってるのか。もはや恐怖でしかなかったが、扉を開けるしかない。赤司はドアノブを回し、思い切って扉を開けた。
赤司の目に飛び込んできたのは、カラフルな色。黄、青、紫、緑…。見覚えのある色。何度も目にした色。これは。
「なんでお前ら……」
なんでここにいるんだ。だからここは京都だろ。お前らのいるところとは遠く離れて……。
「わああああああああ!!!赤司っち帰ってきちゃったじゃないっスか!!!」
「うるせーよ黄瀬!!だいたい、全部お前のせいだろうが!!」
「あーあ。黄瀬ちん……本当なにやってんのー?せっかくのケーキ台無しじゃん」
「まったく落ち着きがないのだよ。鍵の開く音に驚いて皿をひっくり返すだなんて……」
目の前で騒ぐ、カラフルな頭――――……キセキの世代のメンバーだった。
とりあえず、目の前で恐ろしい状況が広がっていることがよくわかる。そして、四人の会話からすると、赤司が開けた鍵の音に驚いて、黄瀬がケーキの乗った皿をひっくり返してしまったらしい。黄瀬は泣きわめくように青峰に縋り付き、紫原はひっくり返ってしまったケーキを残念そうに見つめ、緑間はそのケーキを片づけていた。
何があったんだ。本当に何があったんだ。
訳が分からない、としか言いようがない。なぜ目の前にキセキの世代のメンバーがいて、なぜケーキを用意して、なぜ机の上にはたくさんの料理が置いてあって、なぜ……。
なぜ、天井からつるされる紙に。
「まったく、あの人たちは本当に落ち着きがないですね。緑間君もあんなこと言っておきながら、何度も眼鏡カチャカチャと上げ直してますよ?」
隣で赤司に笑いかけてくる黒子。だが、赤司はそれに反応することができなかった。まったく状況についていけない。そんな赤司の様子に黒子は「やっぱり」とつぶやいた。
「赤司君、覚えてないんですか?今日が何の日か」
今日が?何の日?……今日の日付は…。
「12月20日。今日は、赤司君の誕生日じゃないですか」
そこまで言われて、ハッとした。
今日は……僕の、誕生日か。
天井からつるされた紙に書かれる、「赤司お誕生日おめでとう」の文字。やっと、理解できた。
「赤司君の誕生日だからみんなで集まってお祝いしようってことになったんです。もしかしたら赤司君、自分の誕生日忘れているんじゃないかって思ってたんですけど…まさか本当に忘れているとは」
わざわざ僕のために、みんな集まってくれたのか………。
こんなふうに誕生日を祝われたことは今までなかった。友達が、自分のために集まって、お祝いしてくれることなんて、一度も。だからだろうか。今、嬉しさで胸が締め付けられていた。
なんて幸せなんだろう……。
目の前に広がっている光景は、決して綺麗なものではないけれど、一生忘れたくない、忘れられないだろう、と感じた。
「ちなみに、赤司君」
黒子はさっきと違う、囁くような、赤司にだけ聞こえる声の大きさで呼びかける。
「僕と二人で朝早くから出かけたのは、準備するための時間稼ぎっていうのもあったんですけど」
そこでいったん言葉を区切り、今度は赤司の耳に唇を近づけた。
「デート、楽しんでいただけたでしょうか」
それだけ言って、パッと赤司の耳から離れる黒子の吐息。黒子の言葉が、頭の中で再度流れる。
『デート、楽しんでいただけたでしょうか』
顔が、赤くなるのを感じた。熱い、顔が熱い、身体が熱い。
テツヤはいったいなにを言っているんだ。デート?デートって恋人同士がするものであって、僕たちは元チームメイトという仲なだけであって………。
「て…テツヤ…そ…それはどういう」
「おい、黄瀬、青峰、紫原!!お前らも片づけを手伝え!!!!」
黒子に尋ねようとしたが、緑間の怒りの声にさえぎられた。ちょ、訊くタイミングのがしちゃったよどうしてくれるんだ真太郎。
赤い顔のまま、黒子を見て固まる。黒子はというと、楽しそうな笑みを浮かべていた。まるで、「何か言いたいことがあるなら言ってください?」とでも言うような。赤司は顔がさらに熱くなるのを感じ、黒子から完全に顔をそらす。
だめだ、今から訊けない。無理だ、無理だ…!!
右手で顔を覆いながら、顔の熱が冷めるのをひたすらに祈る。すると、突然黄瀬が「あーーーーーーーー!!!」と叫びだした。
「赤司っちが帰ってきたらすぐ言おうって話だったじゃないっスか!!!」
あわてる黄瀬。
「お前は馬鹿か。お前がケーキをひっくり返したりしなければちゃんと言えたのだよ」
ケーキの片づけを終え、呆れたようなため息をつく緑間。
「ケーキ…もったいない〜」
すでに片づけられてゴミ袋の中に入ってしまったケーキを見つめる紫原。
「いつまで言ってんだよ………」
あきらめろ、とゴミ袋を遠くに投げる青峰。
「……じゃあ、みなさん揃いましたし。みんなで言いましょう」
赤司の横から軽やかな足取りでほかのキセキの世代のメンバーの横に並ぶ、黒子。
五人が、こちらを見つめる。
並ぶ五人を見て、赤司は。
そうか、これが、僕の大好きな……。
「では、せーのでいきますよ?せーのっ」
「「「「「誕生日おめでとう!!!」」」」」
赤司は初めて、嬉し涙を目にためた。
誕生日パーティーが終わって、みんながそれぞれ家に帰ったころ。心を落ち着けた赤司は、黒子にメールを送った。
『今日はありがとう。久々にみんなで集まれて楽しかった。ところで、デートとはなんだ』
その返信は。
『どういたしまして。僕も楽しかったです。
……もしかして赤司君、
ずっと僕とのデートについて考えてたんですか
可愛いですねprpr。
そのままの意味です。
僕は赤司君との初デートのつもりだったんですけど………。
赤司君は違いましたか?
P.S.今日誕生日プレゼント買えなかったので、
なにか欲しいものができたら教えてください』
自分の気持ちに気付いたばかりだった赤司君が赤面してしまったのは、また別のお話。
[memo]
赤司誕2012