「日向、明けましておめでとう」
「おう、今年もよろしくな」

 一月一日。伊月が年末のお笑い番組を見れなかった、と電話で言ってきたため、たまたまその番組を録画していた俺は家に伊月を招いた。……まあ、例えそんな理由がなくたって、新しい年になって一番に伊月に会いたいから、適当に理由をつけて、家に招いただろうけど。
 結局、その日は年末のお笑い番組を見るという目的だったはずなのに、それ以外にもゲームをしたり、こたつに入って雑談したりして、愛しの伊月と楽しい時間を過ごした。もしかしたら伊月もお笑い番組を見たい、というのはただの口実で、本当は俺と同じようなことを考えていたんじゃないのか。そんな自惚れた考えが浮かんでしまう。

 しかし、問題が起こったのはその日の夜だった。


「伊月、今日何時まで俺ん家いんの?」
「んー……この番組終わったら帰ろっかな」

 その時見ていたバラエティー番組はいつも一時間しかやらないのだが、年始だからと三時間ほどやることとなっていた。伊月の返事を聞いた俺は、帰り遅い時間になるし家まで送っていくか、なんて呑気に考えながら「了解」と返した。

「伊月って確かこの人の言うダジャレ好きだよな?」
「…あー……うん、そうだよー」

 会話を交えながらテレビを見ていると、いつの間にか伊月の声がふわふわと頼りないものとなっていた。何があったのかと視線を向ければ、そこにはころりと横たわったままテレビを見る伊月の姿。しかも、その目はほとんど閉じられていて、少しでも気を抜けば夢の世界へと意識を飛ばしてしまいそうだった。

「伊月ー?大丈夫か?」
「んー……」

 ……駄目だ、完璧に夢の中だ。
 小さな子供のようにすぐに眠ってしまった伊月の様子にため息を漏らしながらも、やはり愛しいと感じている俺は本当に伊月のことが好きすぎるのかもしれない。
 しょうがねえ、伊月が帰る予定の時間までは寝かせてやるか……。
 テレビの音量を下げ、寝転がる伊月の横に俺も寄り添うように転がる。綺麗な黒のサラサラとした髪を弄びつつテレビを見ていると、気づけば俺の意識は現実世界から切り離されてしまっていて、目を覚ました時にはもう深夜となっていた。








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