わかんねえほうが、面白いだろ


「花宮の考えてることって、よくわかんない」

 伊月にそう言われたのは、付き合い始めてもう二年が経つ頃だった。
 二年、というと、お互いそれなりに我が儘を言ったり、軽い暴言を吐いたりしたとしても大きな問題にならずに笑って済ませることができる、というくらいまでの信頼関係は築いている頃だろう。もう、二人でいるのが当たり前なのでは、というような思いを秘めながら。
 そんな頃に、伊月がそう、言ってきたのだ。
 別にその言葉を言われた時、お別れムードだったわけでもなければ、何か暗くなるような話題をしていたわけでもない。それまでいつも通り日常的な会話をゆるりとしたテンションでしていたし、言い方も、さらり、とスルーしてしまいそうなほど流れるようなものだった。だから俺も、同じようなノリでこう返した。

「じゃあ俺の気持ち読み取れる能力でもつければいいんじゃねえの?」

 もちろん本当にそんな能力なんて伊月が身につけたら色々と困る。常々俺が心の中で思っている、伊月可愛いな、だとかなんとか。そういうのが全て伊月に伝わってしまうのだ。弱みを握られるみたいでいい気はしない。まあ、実際にそんな能力なんてあるわけないから、そこまで深く考える必要なんてないのだけれども。
 伊月も「いいなーそういう能力」とゆるい空気を纏いながら言い、その後すぐに昼食についての話題へと移ったため、俺はこのやりとりに特に深い意味はない、と思っていた。


 しかし、次の日から伊月がやたらこちらの目を覗き込んでくるようになった。






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