text | ナノ


私の友人はすごく素敵なのよ。優しくて、友達思いで、ちょっと鈍感なところも可愛いの。私は彼女が大好きで、彼女も私のことが大好き。昨日の夜言ってたんだもの間違いないわ。

それなのに、それなのに───

「やあ、ナマエ!」
「あ、ジェームズくん、おはよう」
「今日も可愛いね!」
「えっ、あー…あ、ありがとう…」

真っ赤になるナマエ。可愛いわ。可愛いけれど、ねえどうして。どうしてそんな奴に笑いかけてるの? どうしてそんな奴の一言に反応するの? 私のことが好きなんでしょう? ねぇ、何で? どうして私じゃない奴なんかに───

「私のナマエに気安く話しかけないで」

ぐいっと彼女の腕を引っ張れば、ポッターは分かりやすく眉根を寄せた。
きっと彼は私の想いに気付いてる。

───ああもう、本当に目障り。

「ナマエは君のものじゃないだろ、エバンズ」

ポッターはそう言って、私が掴んでいるのと逆のナマエの腕を掴んだ。止めて止めろさわるな彼女にお前なんかが。ナマエが汚れてしまう。

「早く行きましょうナマエ。席がなくなるわ」
「あ、うん」
「じゃあ、また後でねナマエ!」
「またね」

にぱっと人懐っこい明るい笑みを浮かべてナマエに言うポッター。それに笑顔で応えたナマエ。だからねえどうして笑うの私以外に。暗い気持ちを押し込め、ナマエの腕を引っ張って談話室を後にした。

本当ならね、貴女を閉じ込めてしまいたいの。私だけのために笑って、私だけのために生きてほしいの。でもね、そんなんじゃきっと貴女は笑ってくれないから。
あああああ、何で、どうして世界に私達以外の人間がいるの? 私とナマエ以外なんかいらないのに。私以外にナマエが認識する存在なんか必要ない。ナマエが笑いかけるのは私だけでいい。彼女が誰かと言葉を交わすたびに、笑いあうたびに、吐き気がするのよ涙が出そうになるの。これは醜い嫉妬心だけど、それでも。

「リリー?」

ナマエの声で、ハッと我に返った。
慌ててそっちを向くと、ナマエが心配そうな顔でこっちを見ていた。

「どうしたの? 眉間にしわ寄ってるよ? …もしかして具合悪いの?」
「あら、そんなことないわよ?」

笑顔を取り繕うと、ナマエは納得のいかないような顔で「……無理はしないでね?」と言った。優しいのね。私を心配してくれる。心配かけてごめんなさいね、でもそれが嬉しくて仕方がないのも事実なの。
思わず彼女を抱き締める。ナマエは「えっ、リリー本当にどうしたの」と驚いたような声を上げながら、私の背に手を回した。

「ナマエ…」
「ん?」

優しく背中を撫でてくれるナマエをよりキツく抱き締めた。

「リリー?」
「…お願いよ、」
「え?」
「お願いだから、…」

誰かのものなんかにならないで。
貴女がいなくなったら、私───



寂 し く て 死 に そ う



- ナノ -