text | ナノ


講義(じゅぎょう)が全て終わり、広大な城内(こうない)、に夕の陽が差す頃。

生徒達のざわめき、に混じって聞こえてくる足音、に時計に目を遣り時間通り、
満足気にちいさく呟いて自室の机、に広げた採点途中の羊皮紙を杖振って纏め、扉を見つめる。




「失礼しますルーピン教授(せんせい)、」

こんにちわ



澄んだ声(おと)響かせ、僕と相思相愛(こいびとどうし)となってからも逢瀬の度
背丈同じくちいさな拳で律儀なノックを3回打ち自室に入ってくる彼女、に向かい



「こんにちはMissミョウジ、来てくれて嬉しいよ。そして2人きりの時は敬語も止めて、」

名前で呼んで、と云ったよねナマエ



自分の半分と少し過ぎた程の華奢な身体、を
そっと抱きしめた耳元、で優しく伝えばすみませ…ごめんねリーマス、
色白い頬染めて返された言葉、によく出来たね、答えて口付け落として
柔らかい髪、を撫でれば嬉しそうに細められる瞳(め)。
其の全てが僕のもの、である事にしあわせを感じながら



「さてナマエ、今日の御茶会(デート)、のお菓子は此れ、」

気に入って貰えると良いけど



伝って先程厨房で仕上げてきたばかり、自作の菓子を見せる僕、に



「わ、これこの間から私が食べたいって思ってたのだ、」

何でわかったの、凄いね


今度は大きく見開かれて此方を見たかたちよいおおきな瞳(め)に


(其れ、はそうだよ。
君の好きな菓子(あまいもの)、そして好きな料理(もの)。
全てこと細かに調べて出しているのだから…)


思いながらも其れは内緒、伝って折角だし早速どうぞ、勧める僕、に
ほんとうに不思議…じゃぁ頂きます、伝って食べ始めた彼女、に
笑み浮かべて味は如何かなナマエ、尋ねれば



「うん、とってもおいしい。
いつもありがとうリーマス…だいすき、」

ずっとそばにいてね



満面の笑顔そして紡がれる言葉、は



「大丈夫狼さん、こんなところにいたらさむいでしょ、」

わたし、が一緒にいてあげる



初めて逢ったあの日と変わる事無く可憐、で。
其の様、流れるよな白い首筋にひとめで心堕ちた結果



「父さまと母さまはどこ…?」
「大丈夫だよナマエ、2人が居なくても、」

僕がずっと傍に居るから



暗い邸(いえ)の中僕のたてた計略、に嵌り押し寄せたマグルの刃、に倒れ
闇に映える紅い血溜まりを作って倒れている彼女の両親の亡骸、を魔法で隠し抱きしめた
あの日の「犠牲」、も全ては君を愛しく思うから。

其の後記憶を消し成長した君、が此処(ホグワーツ)に入学したこと、を知った。
後を追うよに僕、も此処に教師(せんせい)として赴任して。

もう離さない、そして逃さない。
僕、が居なければ息も出来ない程に優しく愛殺して同じ人狼(いきもの)、にしてあげる。



「勿論だ。僕(わたし)も愛しているよ、ナマエ」



頭の中で描く闇(ほんしん)、等欠片も見せずに
彼女の言葉、に答えちいさな身体を膝の上に抱き上げ何時も通り笑む。

其れ、は
君が今食べて居る菓子、の放つ甘い馨りの中
真綿で首、を絞めるよな




(嗚呼愛しい君。僕はこの時、をずっとずっと、)