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161pのジレンマ








「那月と名前って絵になるよな」




授業が終わりざわめく生徒達の中、音也がポツリと吐いた一言。

それが頭の中を無限ループ。









161cmのジレンマ










『那月、この間借りた楽譜、有り難う。』

「名前ちゃん!いえいえまたお貸しますね」



那月の隣で笑うのは名字 名前。
同じSクラスの一員で一番最初にパートナーを組んでから、
昼御飯を共にしたりと今では連む仲になっていた。

凛とした姿勢や自分の意見を持っている彼女は、正直カッコイイ。

彼女は161cmしかない俺よりも身長が高く、
スラッと伸びた手足や細い身体が日本人離れして見える。




そして四ノ宮那月と言えば毎日寝食を共にするルームメート。

海外に在住していた事もあってか、醸し出す雰囲気は眼を見張るものがある。

金色の髪に金翠石のような瞳と言うだけで目立つのに、
186cmという長身の持ち主。






そんな二人が中庭に座り込み、楽譜を見ながら話をしている姿は、
癪ではあるが音也の言う意味は嫌と言うほど理解できる。



お似合いだ、なんて噂する騒がしい外野に
とてつもなく苛立ちを覚えた。




「俺、先帰るわ」

「え?翔!?」




音也の呼び止める声なんてもう耳には届かなくて。

口を開ければ当たり散らしてしまいそうな
込み上げてくるソレを何とか押し込んだ。







.










「っ、くそ…、」




酷く苛々する。

頭が血で一杯になったかと思う位
くらくらとさせる熱。

やりきれない苛立ちを抑える様にベッドへダイヴ。


バウンドする身体をごろつかせながら、大きな枕を抱き込んで目を閉じた。








落ち着け。


自分だって七海や渋谷と談笑する時位有るじゃないか。

那月と名前だってソレは同じ。

仲の良い友達なだけだ。





実際那月よりも自分の方が同じクラスだし仲は良い筈。

那月よりも俺の方が、

俺の方が。








「…って那月に勝ってるトコなんてねぇんじゃあ…」




自分と那月の違いを頭で考えてみても勝る所は全く思い浮かばなくて。

あいつの方が身長も高いし、力だって有る。
歌も上手いし、ヴィオラの腕前はプロ顔負けだと思う。
作詞だって作曲だって、なんだって。



なのに何で俺はこんなにちっせぇんだよ。
なんて悔し紛れの自嘲。




『なんでそこで那月?』

「っ、名前!?なんでお前っ!」




不意に聞こえた胸中の人の声。

横たえた身体を無意識に起こせば、覗き込んでいる名前の姿。




『翔、帰ったって音也から聞いたからさ。
来ちゃったー』




購買の袋から、プリン食べるでしょ、なんて言いながら
目の前に差し出されるプラスチック製の透明なスプーンとソレ。




「…なんで此処で食うんだよ」




想い人が現れたことで少し軽くなった苛立ちも
素直ではない性格が冷たく声を吐き捨てる。



那月と共同スペースに置いたソファに座り込んで蓋を開ける名前の隣に身体を滑り込ませれば、
少しだけ高い位置にある目がにっこりと笑い、
スプーンで黄色いプリンを一掬い。



『はい、あーん』

「は!?」

『あーん!!!!』



無理矢理突っ込まれ、舌に感じる甘味。

ふわりと掠めるカラメルの香り。




『美味しい?』

「…ぅん」



名前が嬉しそうに悪戯に笑うから。

悩んでいたのが馬鹿馬鹿しくて。





『翔は誰よりもカッコイイよ』





窓から差し込むオレンジ色の夕陽を受ける名前が柔らかく笑う。

世界が彼女色に染まる感覚。






「なぁ。絶対…那月よりも、誰よりもイイオトコになるから、」






自覚以上の大きな想い。
身体中いっぱい溢れる“好き”。





『うん』





いつか君に届けるから。





(だからずっと見てて)



end


――――――――――

「Drop」あき様より、相互記念にいただきました!

悶々とする翔ちゃんが可愛すぎで、こっちも悶えちゃいますね(´ω`)
翔ちゃんにあーんてしてあげたいです…!

素敵な小説をありがとうございました!

持ち帰り厳禁です。

2011.10.20






bkm



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