うたぷり短編 | ナノ


So Cute !!



「やっぱり、翔ちゃんってかわいいよね」
「再確認するみたいに言うな。俺は可愛くねえ!」

打てば響くようにそう返してきた声の主を見れば、禁句にふれたとき特有のつり目でこっちを睨んでいた。頬はかすかに膨らんでいて、もともとのかわいさがさらに増しているようだ。
ここは彼、来栖翔の部屋だ。ルームメイトの四ノ宮くんはレコーディングルームで練習中らしい。わたしは何をしているのかと言えば、明後日提出のフレーズ作曲課題と悪戦苦闘中。極上のワンフレーズを考えてこいとか、三日でできるもんかね、それ。
パートナーである翔ちゃんにも手伝ってもらいながら、必死に考えていたのだが。

「だってさ、頭フル回転させてるときにふと顔を上げると天使がいるんだよ。これはきゅんとくる」
「そういうきゅんはいらねー」
「じゃあどういうきゅんならいいのさ」
「じ、自分で考えろっ!」
「ふむ、翔ちゃんから男気を感じてきゅんってなるのはなかなか大変かな」
「わかってんじゃねえか畜生ー!!」

顔を赤くしてそう怒鳴った後、翔ちゃんはばたりと机に顔を伏せた。耳まで真っ赤になっている。つついてみると「やめろ」とふるえた声が返ってきた。
かーわいいっ!!

「そんなにかわいいの嫌なの?」
「当たり前だろ。男が可愛いなんて…」
「女子は喜ぶのになぁ」

かわいいなんてとても素敵なことなのに。むしろ羨ましいほどに。
そう思いながらわたしは筆箱をしまい、ファイルを閉じた。その理由はもちろん、翔ちゃんで遊ぶため。

「ならば翔ちゃん、『かわいくない』と言われる秘訣を教えてしんぜよう」
「なんだそれ、うさんくせー」
「トキヤさんから毎日『かわいくない』と言われてるわたしだよ、聞いて損は無いと思うな」

すまして言ってやると、翔ちゃんは顔を上げてじっとこっちを見た。顔の赤みは引いてきているが、めちゃくちゃ怪しむような目をしている。失敬な。

「…言ってみろよ」
「おっけーい。まあ秘訣と言っても単純なもので、すべての会話を仏頂面でこなせばよいのですよ」

人差し指をくるくる回しながら、言葉を続ける。

「トキヤさんがかわいくないのは何故か?感情をめったに出さないからです。真斗君がかわいいのは何故か?彼はよく照れるからです」
「一理ある…気がする」

照れた真斗君の破壊力は翔ちゃんと互角なのだ。

「はい練習。翔ちゃん無表情をどーぞ」
「ん…こうか?」

その顔がすでにかわいいなんて、もう才能と言うしかないね翔ちゃん。

「そーそーそんな感じ。ではこれから私が声をかけるけど、すべて『ふーん。で?』で答えてね」
「お、おう」

声を出すと顔が戻りそうになる翔ちゃん。がんばれ。

「翔ちゃんはかわいいね」
「かっ!…ふーん。で?」
「翔ちゃんは超ちっちゃいね」
「……ふーん。で?」

ふふふ。はじめたばかりなのに口の端がぴくぴくしている。額に見えるのは青筋かな?
やはりからかうなら翔ちゃんに限る。にまにまとしながら、わたしは精一杯甘ったるい声を出した。

「翔ちゃん、大好きだぞ」
「ふっ……!!?」

ぼん!という効果音こそ無かったものの、先ほどの比ではないくらい翔ちゃんは真っ赤になって固まった。動かないこと数分間。
さすがにやりすぎたかな。そっと反省する。
ははは、冗談だよ来栖君。真に受けちゃったかい?
そう笑い飛ばそうとした、そのとき。

「名前…」

机の上に出していた手が、強い力で捕まれた。誰に?――翔ちゃんに。

「お、俺も」

ああもう、かわいすぎるよ翔ちゃん。
そんな顔をされたら、わたしも赤くなるしかないじゃないか。

「俺も大好きだ、バカ!」


So Cute !!


(え、えとねー翔ちゃん。今のは…)
(顔赤いぞ)
(そ、そっちだって!)


――――――――――

ということで翔ちゃん初夢でした。
名前変換一カ所しかない…
上手ヒロインを下克上する純情翔ちゃんが大好きです。
閲覧ありがとうございました。

2011.09.03 侑紗






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