うたぷり短編 | ナノ


世界一!



来栖くんは世界一可愛い。

初めて出会ったそのときから、あたしはそう確信していました。
華奢な体躯。鮮やかな金髪にスカイブルーの瞳。あたしより尚小さな身長。そのくせ偉ぶりたがる。でも常識人。
どんな運命の女神様が微笑んでくれたのかはわからないけど、偶然にも彼のパートナーになることができたあたしは、もう毎日が昇天しそうなくらい幸せです。
正直、同じ教室で過ごしているというだけでもかなりの奇跡だと思うのですよ。何十億分の確率ですか。世界一可愛い少年と同じ学舎に通い、あまつさえ二人組をつくるなんて。
来栖くんが世界一可愛いならば、あたしは世界一の幸せ者です。
可愛い少年を眺めることは、何より代え難い至上の喜びですから。

「はふぅ…」

そんなわけで授業中、一番後ろの席から来栖くんをずっと見つめています。可愛い可愛い可愛い!後ろ姿だけでもベリベリキュートです。帽子がずり落ちそうになって、慌てて位置を戻す来栖くんが可愛い!

にまにましてしまう口元を隠して、あたしは心の中の萌えを溜めていきます。いつか来栖くんを襲ってしまいそうなほど、彼は可愛い。顔も可愛い。仕草も可愛い。性格も可愛い。つまるところ全部可愛い!

ああ、あたしにあと少し、いやかなりの勇気があれば。臆面無く来栖くんに可愛いと言える度胸があればなあ。目下の望みは来栖くんを最大限に愛で撫で回すことなのです。Aクラスの四ノ宮くんみたいに、ぎゅうってする境地には至れなくても。

いや、もしこのまま仲良くなれれば、ひょっとすると可能かもしれません。あたしが、来栖くんをぎゅって。ぎゅうって…!!!目をつぶり、想像してみる。後ろから肩に手を回し、胸の前で組みます。そのまま体を密着させれば、目の前には綺麗な金髪。体つきは男の子らしく少し堅めで、だけどあたたかい――

はっ。いかん、そこまでの妄想を繰り広げるのはいかんぞ。限度があります。現実の人間をネタにしてそのような妄想をするのは、さすがにアウトです。

「名字!」
「はいごめんなさい!」

いきなり名前を呼ばれて顔を上げると、あたしの謝罪に首を傾げながら先生が「保健室に行ってきなさい」と言いました。
ぽたり、ノートに落ちた赤い染み。

「わああっ」
「誰か、ついていってあげてください」
「あ、俺が」

慌てて鼻を押さえて教室から出ると、なんとあろうことか来栖くんがついてきてくれました。
だけどお礼を言うどころか、あたしは鼻の頭を押さえて上を向きながら歩くので精一杯。

「大丈夫か?」
「た、ぶん」

そのまま、血が口に流れ込みながらも保健室に付き、洗面台とティッシュをお借りしました。先生はおられません。だから無断拝借ですが、構わないでしょう。
本当はずぼずぼと鼻にティッシュを突っ込みたいのですが、生憎目の前には愛しの来栖くん。ああなんて愛らしいのだろう。そんな彼の前で、女を捨てる格好なんてできません。

「しかし、おどろいたな。いきなり鼻血出すなんて」
「あ、ごめんなさい来栖くん。わざわざ」
「いいって、俺たちパートナーだろ?」

ああ、そんな笑顔を向けられたら、きゅん死にしてしまうじゃないですか。
残りの授業サボっちまうか、とベッドに腰掛ける来栖くん。

「つーか、なんでまた鼻血なんか出したんだよ。風邪はひいてなかったよな」
「あ、その」

うーん、本当のことを言ってもいいのでしょうか。
…まあ、いいか。

「来栖くんを、見てたんですよ」
「…なっ!?」

一気に顔が赤くなった来栖くん。始めてみる表情だけれど、やっぱり可愛い。照れたような怒ったような顔で、

「ば、ばか、いきなりそんなこと言うなよな」

そう言ってそっぽを向くものだから、やっぱり来栖くんの可愛さは、


世界一!


その後、再び鼻血が出てきて更に慌ててしまいました。

――――――――――――

アンケリクより「翔ちゃんが可愛すぎて鼻血を出す」でした。
実際、萌えて鼻血って出るんですかね。もしそうならわたしはとっくに失血死してますね。

アンケリク、ありがとうございました!

2011.11.03






bkm



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