うたぷり短編 | ナノ


パートナーですから



「マイレディ、放課後は空いているかい?」

「あなたのためならどんなに暇でも何か用事を見つけますよ」

「じゃあ、お昼を一緒にどうだい」

「生憎ですが私にも友人はおりますので」

「パートナーは友人以上の関係じゃないかな」

「神宮寺レンが友人以下なのです」


ばっさりと斬り捨てられ、レンは苦笑とともに彼女の前の席に腰を下ろした。名前の露骨に嫌がる姿も気にしない。

(今日こそは、食事くらい)

名前とパートナーになっておよそ1ヶ月。並み居る女たちを押しのけてレンと組むことになった彼女だが、そもそもくじ引きの結果だったため女たらしの彼が気にくわない。アイドルの素質は認めざるを得なかったものの、曲が絡まない点では一切他人を貫いている。
対してレンはといえば、彼女には限りない興味を抱いている。そもそもこれまで自分に靡かない女など考えられなかったのに、目の前で眉をひそめている名前はその真逆を行くのだ。

(その仏頂面を、朱に染めてみたいものだ)

「つれないね、レディ」

「いつものことでしょう。あなたに対しては」

「そんなに眉を寄せていると、皺になるよ」

「触らないでください近寄らないでください自分の席に帰ってください」

「ふふふ、可愛いね」

「どこをどう考えたらその結論に至るのですか。ああ答えようとしなくていいのでどこかに行ってください」


全くつけいる隙がない。
兎にも角にも、今日は二人で話す必要があるのだ。それはパートナー関連だと教えれば渋々承諾するだろうが、そこはレンのプライドが許さない。
あくまで、彼女の意志で食事に同席させたいのだ。


「レディ、どうしてそんなに俺を拒むんだい」

「自分で考えてください」

「俺のどこを直せばこっちを見てくれるのかな」

「生まれ変わって品行方正になれば考えてあげますよ」


遠慮のない毒舌に、苦笑を深めるレン。強敵難敵とは彼女のことだろうか。


「そもそもどうして――」


おや珍しい、と彼は思った。名前が自分から話しかけるなんて、片手の指で数えられるほどしかなかったのに。


「どうして、あなたは私に絡んでくるんですか」

「そりゃ、レディが全然振り向いてくれないからね。アピールするしかないだろう?」

「決してそんなことはないと思いますが…振り向いてくれる女の子なら、あちらにたくさんいらっしゃいますよ」


名前はその方向を見もせずに、しかし確信を持って言った。確かに、疑るような視線はずっと突き刺さっていたが。

(気づいていたのか)

しかしその上で会話を続けてくれる――なかなかいい感じなんじゃないかとレンは苦笑を微笑に変えた。
帰れと言われたことなど、すでに記憶にない。


「レディこそ」


レンは名前の顎に手をかけ、ぎりぎりまで顔を近づけた。「おい、レン!」どこかのチビが何か言っているけど、気にしない。
対する名前は顔を赤くするどころか迷惑そうな表情を強めていた。

(決めた)

レンは思う。

(この少女を、手に入れてみせよう)


「どうして俺と会話してくれるんだい?」


嫌いなら無視をすればいいじゃないか。そう囁くように尋ねると、彼女は深いため息の後、こう言った。


"パートナーですから"

「――それだけです」


――――――――――

誰も知らない恋の始まり…なのかな。

アンケより、「レンの色気に靡かないつんけん話」でした!

神宮寺さんわかんなすぎる。色気とかわかんない。

アンケリク、ありがとうございました!

2011.09.23






bkm



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