薄桜鬼短編 | ナノ


教室にて



「名前ちゃんのレオタード姿、見てみたいなあ」
「あたしは見せたくねえんだけどなあ」
「あはは、そんな照れなくていいんだよ」
「誰がだ!つーかなあ、」

ぎろりと僕をにらんで、名前ちゃんは箸を突きつけた。

「何でてめーはさも当たり前のようにあたしと弁当食ってんだよ…!!」
「ラブラブだから」
「念のため聞こう。誰と誰がだ?」
「僕と名前ちゃん」
「みっちゃんよっちゃんどこ行ったんだあああああ!!!」

無駄だよ、その二人は僕が交渉して邪魔が入らないようにしてるから。
あの子に恋愛を教えてやって、なんて、名前ちゃんはいい友達を持ったなあ。
そんなことを思いながらまだ突き出されたままの箸を舐めようとすると、慌てて引かれた。残念。

「何やってんだよ!」
「間接キス?」
「お・こ・と・わ・り・だ!!」
「何だ、直接がいいなら早く言ってよ」
「二択しかねえのかよ!」
「んー」
「や、やめっ、来るな離れろ!」

何だかんだで純情な名前ちゃんは、僕が目を閉じて唇を突き出せば、真っ赤になってうろたえた。
可愛い。
結局一緒にお弁当食べてくれてるし、やっぱり名前ちゃんって僕のこと好きだよね、絶対。
それと同じくらい、僕も彼女が大好きだ。一緒にいてこんなにも楽しい女の子は、きっと後にも先にも名前ちゃんだけだろう。うん、素晴らしい両思いだよね。

「だから名前ちゃん、レオタード姿見せてよ」
「てめーはまず脈絡っつー言葉を辞書で引いてきやがれ…!」
「あ、写真は持ってるから、生でね」
「聞けよ、っつーか、は!?ななな何を何で」
「三井さんからもらった」
「みっちゃんなんて絶交だこんちくしょー!!」

名前を女にしてやれるのは、沖田くんしかいないわ…なんて、まったくよくできた友達だよ名前ちゃん。
ふふふ、もちろんいつかは名前ちゃんの全てを僕のものにするつもりだけど、とりあえず前段階として、名前ちゃんが部活を頑張る姿を見たい。
新体操部きってのエースの演技を、僕はまだ見たことがなかった。こっちの部活の都合とかあるし。新体操部と剣道部は試合の日程がよく重なるんだよね。まあ、剣道部が毎週のようにあるからなんだけど。

「次の大会、今週だよね」
「そーだけど…まさかてめ、来る気か!?」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、生憎剣道部も練習試合なんだ」
「よっしゃ、さすが土方先生大好きだぜ!」

快哉を叫ぶ名前ちゃんにむかついたので、僕の箸を名前ちゃんの唇に触れさせた。ぐり。

「んなななにすんだっ」
「間接キス」
「しれっと言うな!んでそれ舐めんじゃねえよ!」
「直接がいいの?しょうがないなー」
「しょうがなくないしだから離れろ馬鹿!」

今度は本気で直接キスを狙ったけど、さすがに避けられた。ちっ。舌打ちすると名前ちゃんが「ざまあみろ」と言ってきたので、また今度お仕置きすることを胸の中で誓う。

「それじゃ、今日の放課後」
「は?」
「僕見に行くから、レオタード着てね」
「試合があんだろ、部活出ろよ」
「どうせ勝つし」
「あーあー自慢ですかくそむかつく」
「名前ちゃんに『負けた』なんて報告したくないしね」
「報告すらいらねえよ」

はあ。名前ちゃんはため息をついて、「部活休もうかなあ」と呟いた。

「駄目」
「てめーが来るかと思ったら胃が痛くなったんで早退しますー」
「じゃあ保健室で一緒に寝ようか」
「原因が離れてくれねえだと!?」
「僕はどこまでも名前ちゃんと一緒だよ」
「そのせりふだけなら女子が発狂するだろうな」
「だから今度一緒にお風呂入ろうね」
「やっぱり脈絡を調べてこい!」

どんなに言葉が冷たくても、最終的にちゃんと会話してくれる名前ちゃんが、僕は大好きです。


教室にて

レオタード姿の名前ちゃんはまるで妖精みたいで、ますます彼女に触れたくなった。

――――――――――――

アンケリク「変態沖田がセクハラ」より。
言葉のセクハラ、かな?

アンケリク、ありがとうございました!

2011.11.20







bkm



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