うたプリ長編 | ナノ


27



鋏で折り紙を三等分。片端に糊をつけて、くるりと一回り。そうして輪っかを鎖のようにいくつも繋げていく。
放課後、来栖くんたちに見つからないようにこっそりと集まり、私たちは輪飾りを作っていた。買い物は昨日、つまり日曜日に外出許可をもらって済ませ、ケーキ作りに必要な材料はキッチンの一角を借りて冷蔵させてもらっている。万が一失敗してもいいように、スポンジの材料はちょっと多めに買ってある。余ったら別のものを作るのもいいかもしれない。

「そういえば」

と、一ノ瀬さんが口を開いた。

「音也たちはどうして二人の誕生日を知ったのですか」

確かに。私も不思議に思っていた。まだ会って二カ月ほどしか経っていないのに。
音也くんは「えっとね」と言ってそれに答える。その間にも輪飾りを作る手は淀みなく動いている。慣れているんだなあ。音也くんは友達が多そうだから、今までに一杯誕生日会を経験しているんだろう。

「那月が騒いでたんだよ。すごく嬉しそうに『僕と翔ちゃんの誕生日は同じなんですよ〜』ってさ」
「そうだったな」

相槌をうつ聖川さんは神妙な面持ちで紙を丸めている。少々手つきが危ういのは、音也くんとは逆にこういうことに慣れていないからかな。確か聖川さんは財閥御曹司。輪飾りなんて庶民的な物には縁が無かったかもしれない。
だけど聖川さん、何だか楽しそうに見える。

「そういえば、皆さんの誕生日はいつなんですか?」

春歌ちゃんが小首を傾げて尋ねた。目を向けたのは一ノ瀬さんだ。
視線を受けて、一ノ瀬さんは少し戸惑ったように瞬きを一つして、手元に視線を戻した。

「私なら、八月六日ですよ」
「やっぱりHAYATOと一緒なんだね」
「…………」

無言で手を動かす一ノ瀬さんの輪飾りはとても綺麗だった。几帳面な性格がよく表れている。
確か一ノ瀬さんは人気アイドルHAYATOの双子の弟だと言っていたはず。でも、全然性格が違うから、何だか人間の不思議さを感じて見たり。

「音也くんは、いつ?」
「俺?俺はねー、四月十一日だよ」

音也くんが明るく言った。ふうん、と流しかけて動かしていた手が止まる。

「……もう、過ぎて、る?」
「そうだねー」

ど、どうしよう。春歌ちゃんと顔を見合わせる。春歌ちゃんも驚いたような顔をしていた。知らなかったみたいだ。二人であわあわと困っていると、そんな私たちを見て音也くんが苦笑いをした。

「いや、そんな顔しないでよ二人とも。俺は別に何とも思って無いからさ」
「で、でも」
「んー、それじゃ、美味しいケーキを期待してるよってことで…どう?」

それでしそびれていたお祝いにかえるということかな。私は大きく頷いた。
来栖くんと、なっちゃんさんと、音也くん。ケーキ作りがますます重要性を増したみたいだ。

「できたぞ」

そのとき、聖川さんが声を発した。みんなが彼を見ると、少し得意げな表情で聖川さんが作った輪飾りを広げた。

「……あははっ」
「ふふ」
「な、なんだ」

その輪飾りは、一つの輪に四つの鎖がつながった、ちょっと不思議な形をしていた。
何だかおかしくなって笑いだした私たちを見て、聖川さんはしきりに首をかしげていた。





[*]← →[#]

bkm









top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -