うたプリ長編 | ナノ


17



「で、どれにする?」

そう言った来栖くんの目は、口よりもものを語っていた。

二曲目がいいんだな、と私はそう悟る。

だけど。来栖くんに合うのは、三曲目じゃないかって私は思う。
昨日聞かせてくれた来栖くんの歌は、とっても元気いっぱいだった。聞いているこっちまで元気になるような、そんなパワーを持っていた。無邪気に歌を楽しんでいるのが手に取るようにわかる。彼の歌は、そんな印象を抱かせた。
要するに、可愛かったのだ。(ちなみにその後「可愛い」と言うと怒られた。)
だから、イントロでは私も二曲目を推すのだけど、如何せん歌詞が年齢とずれている。「楽しそう」というよりも、「情熱的」な大人の恋、というのがこの曲のイメージだ。

続く三曲目は、美しいピアノソロから始まった、とても静かな曲で、とても来栖くんの無邪気さには合いそうになかった。だけど、よく聞いてみれば、これこそ一番ぴったりなんじゃないかというくらいの歌だった。
歌詞が、良いのだ。とても。ある少年の一途な恋を唄い上げたもので、その感情がまっすぐ、ブレなく伝わってくる。そんな歌。
来栖くんの歌声も、まっすぐだ。ビブラートなんて彼にはいらない。力強く伸びやかなその声は、哀愁を帯びさせればさらに魅力的になりそうだ。だからこそ、私は来栖くんに三曲目を歌ってほしい。

だけど、と私は迷う。来栖くんが二曲目を望むなら、それをサポートするのがパートナーの役目なんじゃないかって。

「く…来栖くん、は?」

恐る恐る言葉を返すと、来栖くんは笑顔になって「おう!」と言った。

「俺様は断然二曲目かな!難しそうだったけど、だからこそ挑戦してみたいっていうか」
「…うん、そっか…」
「お前はどう思う?」

再生機から曲を取り出しながら、再度尋ねられる。
私は迷っている。正直に告げるべきか、彼を応援すべきか。

「私は…」

――それでも、目の前の無邪気な笑顔には、反抗なんてできなかった。
私はふっと笑みを浮かべる。この笑顔が彼の眼にわざとらしく映ってはいませんように。

「私も、二曲目、…かな」
「…そっか。じゃあ明日から練習な!また迎えに行くから、教室にいろよ」
「はい」

そうして私は何事も無かったかのように部屋へ戻った。しかし不安の種は、確実に蒔かれてしまっていた。








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bkm









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