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お昼休み、わたしと友ちゃんはBクラスにやってきた。その理由は単純で、舞衣穂ちゃんをお昼に誘うため。舞衣穂ちゃんはあの出会った日以来、食堂で二、三回ほどしか会ったことがない。せっかく作曲家コースのお友達ができたので、しっかり仲良くなりたいと思うのです。
「あ、いたいた。舞衣穂ー!」
「………?」
友ちゃんが声を張り上げると、席で授業の片づけをしていた舞衣穂ちゃんがこっちを見た。そのまま動かないこと数秒間。
友ちゃんが遠慮なくクラス内に入っていくので、わたしも「失礼します」と小声で言ってついていく。
「舞衣穂、一緒にお昼行こう」
「……あっ」
机の前まで来ると、舞衣穂ちゃんは声を発して順番にわたしたちを見た。
「ともちゃんさん、と。…は、春歌さん」
「そう!あんた人の名前覚えるの苦手らしいのに、よくわかってくれたね」
ともちゃんの嬉しそうな顔につられて、舞衣穂ちゃんも微笑みを浮かべる。
「それで、えと。…お昼?」
「そうそう。一緒に食べに行こうよ、舞衣穂ちゃん」
ぐるきゅるるー
わたしが言った直後に、舞衣穂ちゃんのお腹が鳴る音がした。
さっと顔を赤くして、さらに小さな声で言う。
「す、すみません。…ごはんのこと考えたら、空腹…を、思い出しまして」
「そっか。よし、じゃあ早く行こう。ね、舞衣穂」
ぽん、とともちゃんが手を打って再度提案すると、恥ずかしそうな顔のまま、舞衣穂ちゃんがこちらを見る。
「……いいん、ですか?」
その質問にわたしたちは顔を見合わせ、そして思い切り笑顔で答えた。
「当ったり前じゃんか」
「友達でしょ、舞衣穂ちゃん」
「…友達」と呟いて、ぺたりと自分の頬を触る。そして急に立ち上がり、今度は緊張した面持ちで口を開いた。
「と、ともちゃん。春歌、ちゃん。…行きましょう」
「さん」付けが取れた。すごくどきどきしているだろう舞衣穂ちゃんの手を引っ張り、わたしたちは食堂に向かった。
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