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「レン様、私をパートナーにしてくださいっ」
「いいえ、私ですよね!」
「君たち一人一人が素敵すぎて、俺には選べないよ」
今日で入学して一週間がたつ。つまり、パートナーの期限が来るということだ。俺はすり寄ってくるレディたちに言葉を返しながら、さてどうしたものかと考えていた。この中から決めてしまうことは簡単だ。しかしそれでは相手の将来をつぶしかねない――恋愛禁止の罰として退学になりかねないのだ。それを俺はよくわかっている。自惚れではないはずだ。
さて、この場をどうしようか。
そう思案したとき、俺の視界に一人の少女が飛び込んできた。おチビちゃんのパートナーのあの子だ。
何かきょろきょろと周りを見渡している。丁度良い。口実にさせてもらおうかな。
「やあ小さなレディ。何か困っているのかい」
「え?」
声をかけると、きょとんとこちらを見上げてくる。そして首を傾げながら手帳を取り出し、「あぁ、」と頷いた。
「こ、こんに、ちは。神宮寺、さん」
「レディから挨拶をもらえるとは嬉しいね。光栄の対価にレディの困り事を解決してあげよう」
「え、あの」
彼女の戸惑いも気にせず、周りのレディたちに別れを告げ、少々強引にその場から離れることに成功した。
「可愛らしいレディ、感謝するよ。おかげで助かった」
「え…あ、はい」
「君のような心優しい人をパートナーにできて、おチビちゃんも幸せ者だね、小さなレディ」
「…………えと」
手を取ってそう言うと、彼女は何度も瞬きをした。当惑の表情だ。おや、と思う。顔を赤くしたりはしないようだ。
そして彼女は何かを言いたそうに見てくるので、「なんだい?」と聞いてみると、
「わ、私。…そんなに小さくは、ない…です、よ」
――この状況で出る台詞がそれか。
天然というか、抜けているというか。
俺はなんだか拍子抜けして、声を上げて笑っていた。
「あ…あの…」
「くく…いや、ごめんねレディ。ただ――」
この子はやはり、友人と呼べる側の人間みたいだ。
「やっぱり、パートナーだなと思ってね」
『神宮寺レン チャラそうなオレンジ。中身はいい奴』
(補足)小さなレディと呼んだのは、舞衣穂ちゃんが小さいからではなく、「おチビちゃん」のパートナーだからでした。
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