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07
今日は大変な一日だったなぁ。
すべての授業を終えて部屋に帰り着き、私はベッドに横になった。
友達が、ええと、…八人…?も増えてしまった。生まれて初めての快挙と言えるだろう。
…まだ顔と名前が一致する人は来栖くんしかいないけど。
「来栖くん…」
『お前の演奏に感動した!』
パートナーに選んでくれた彼だけは、しっかりと名前を覚えている。顔は…とても可愛かったという程度だけど、会ったらわかる自信はある。
いつか、ありがとうと伝えたい。こんな私を選んでくれたこと。こんな私に、手を差し伸べてくれたこと。
「来栖くんの、曲」
今はまだ全然思いつかないけど、彼にぴったりのメロディーを、私が届けよう。
そう心に決めたところで、ルームメイトさんが帰ってきた。
「あ…お、かえり。な、さい」
「…………」
きれいな茶色い巻き毛の彼女は、ちらりと一瞥をくれただけで彼女の領域…カーテンで仕切られた空間へと入っていった。
やはり、そう簡単に挨拶を返してはくれない。
弾んでいた心に歯止めが掛かり、落ち込んでしまう。
「あんたさァ」
「あ、は、はいっ」
と思ったら、向こうから話しかけてきた。これは仲良くなるチャンスかも。張り切って返事をする。
「来栖くんとパートナーになったってホント?」
「は、はいっ!そう、です。ほ、ホントです」
「ふぅん…」
その声は至極つまらなそうで、でも負けじと私は笑顔を保つ。
彼女はSクラスだから、もしかしたら来栖くんから何か聞いたのかもしれない。
「調子に乗らない方がいいわよ」
「……え?」
しかし予想外に冷たいその声に、思わず私は固まった。
どういうことですか、とも聞けない。息を呑んで怯えたように彼女を見る。
カーテンの隙間から見える、私を睨みつけている紺色の瞳。
「SクラスとBクラスが釣り合うとでも思ってんの?BならBらしく低脳同士で連みなさいよ」
「……」
ぎゅっと布団を握りしめて俯くと、彼女は完全にカーテンを閉め切った。
その夜はそれ以上彼女と話すことはなく、ショックで頭が働かないまま波乱の一日が過ぎていった。
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bkm
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