うたプリ長編 | ナノ


01



「パートナー決めは、一週間以内に行うこと」

バンと教卓を叩いてそう言ったのは、ずっと昔から俺が憧れていた相手、日向龍也だった。会えるかもしれないと密かに期待していたが、まさか担任の先生になるなんて想像もしていなかった。先生がこの教室に入ってきた瞬間のざわめきはすごかった。俺も一緒にどよめくと同時に、これからの日々が一気に楽しみになったというのも事実。いや、もともと楽しみだったけど。

国内屈指の超有名アイドル養成学校、早乙女学園。そのSクラスに振り分けられた俺は今しがた入学式を終え、教室で日向先生の話を聞いているところだ。

主にこの学園のシステムについて説明を受けていた。まず、三月にある卒業オーディションに向けてオリジナルの曲を作るということ。その際には必ず作曲家コースとアイドルコースの奴がパートナーとなり、最高のパフォーマンスを披露することが要求される。そして卒業オーディションに合格すれば、即デビューとなること。
そして、そのパートナーは一週間以内に見つけ出さなければいけないということ。俺様はアイドルコースだから、作曲家コースでウマの合う奴を見つければいいわけだ。

「なるほどねぇ…」

隣の席の長身オレンジ長髪の男が、そう小さく呟いた。見るからにモテそうなタイプだ。長い脚が羨ましいなんて断じて思ってねえからな。周りの女子からちらちら視線を送られることに対して臆することなく、むしろたまにウインクを織り交ぜている。ツワモノだな、こいつ。
それから、その斜め前に座っている奴も注目を集めているようだ。アイドルのHAYATOにそっくりな、でも仏頂面をしたそいつは、静かに窓の外を見つめている。あいつも身長が高そうだ。ここに来れば俺よりチビ…俺より小柄な奴がいるかと思ったけど、式のときに見渡した限りみんな俺より背が高かった。悔しいけど、俺はまだまだ成長期に顔をのぞかせたばかり。この中には17とか18とか、俺より年上の奴も混じっていると聞く。そりゃあ俺より高いよな、仕方ない仕方ない。

「最後に、この学園には恋愛禁止令がある」

ふと我に帰れば、先生の話も終盤に差し掛かっていたようだ。
女子から「ええー」とブーイングが起こる。さっきオレンジの男に流し目を送っていた女子ばかりだった。
日向先生は動じず、むしろにやりとして言った。その笑みですら男気が溢れている。かっこいい。

「これを破ったら即退学だから、絶対守るように」

大丈夫だ。ここまで来るのすら大変だったのに、みすみす自分から退学になんてなったりはしない。
そんな決意と共に、中にはきっと隠れて付き合う奴とか出てくるんだろう、という予想もついた。

「じゃ、今日はここまでだ。各自寮に戻って明日に備えろ。頑張れよ」

端に置いていた出席簿を取り上げると、片手をあげて颯爽と教壇を後にした。
先生が出て行ったとたんに、張り詰めていた空気がほっと緩む。と同時に、女子の視線がこちら…というか、オレンジ男へと集まるのを感じた。
逃げた方がよさそうだと判断し、鞄を持って急いで教室を出る。長い廊下に日向先生の後ろ姿が見えた。俺がこの場所に立っているきっかけにもなった背中だ。胸が熱くなる。俺は息を大きく吸い込んだ。

「一年間、よろしくお願いします!」

声を張り上げると先生はちょっとびっくりしたように立ち止ってこっちを向いた。距離があってはっきりと表情まで見えるわけではないけれど、先生は笑ったように思った。さっと右手を挙げてみせる。ああ、まぎれもなくケン王だ。

「おし」

去っていく背中を見送ってから、俺は踵を返して寮へと向かった。
まずはパートナー探しだな。俺の将来を預けると言っても過言ではない相手だ。しっかりと息の合う奴を探そう。

「やるぞっ!」

突き出した拳は誰もいない廊下で空気を鋭く切り裂いた。

絶対アイドルになってやる!





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bkm









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