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(上)
ある朝、少し霜が降りて、芝生が朝日にきらきらと照り映えていた冬の朝。
日課のランニングをしていたわたしは地面に手紙が置かれているのに気がついた。
白い息を吐きながら立ち止まり、それを見る。封筒の表にはご丁寧に[Sクラス 中井編子様]と書かれてあった。なかなかの達筆。誰からだろう。
呼吸が大分整ったところで封を切り、手紙を取り出す。
「なになに」
実のところ、それが何であるかはおおよそ見当がついていた。
春先に入学して以来、二、三度ほど同じようにして封書を受け取ったことがあるのだ。ただし場所は様々で、ある時は下駄箱の中に、ある時には戸棚の上に。もちろん差出人だって既に分かっている。あの人しかいない。
「ふーむ…」
中に書いてあったのは、
[アイドルコース中井編子に告ぐ、]
から始まるたった三行だけだった。今北産業だ。
内容はすぐに把握したので、手紙をくしゃくしゃに丸めてポケットにねじ込む。
「よっし」
数回屈伸して足の筋肉をのばし、ランニングを再開した。
頭の中で、あることを考えながら。
(…ふふ)
bkm
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