※グロ注意


 心臓。人間に備わっている器官の一つ。潰すと死ぬ。
「はずなんだけどなぁ?」
 槍は、確かに男の左胸を貫いていた。きちんと、夥しい量の血も出ていた。けれど、その胸は規則正しく上下していて、男が生きているということを示していた。
「人間じゃないからな」
「サーヴァントって心臓潰しても死なないんだっけか?」
「ここはシミュレーションルームだからな」
「なんでシミュレーションルームにいるんだっけか?」
「俺たちが暴れたからだな」
「なんで暴れたんだっけか?」
「さぁな。忘れた」
 めきょりと変な音がして頭が割れた。脳髄がぶちまけられて一瞬視界が暗くなったが、すぐに元通りになった。地面には、肉のような何かが散らかっている。あれは、オレの一部といってよいのだろうか。ならば今この頭に詰まっているものは何だ?肉?綿?石?なんだっていい。目の前に生きている人間がいるのが全てだ。
「だから、人間じゃねぇって言ってるだろうが」
 切り離した首が喋った。と思ったら、瞬きの間に新しい首が生えていた。あ、これ、似たような奴をこないだ大殿が話してた気がする。確か頭がパンのやつ。
「俺ぁパンでもねぇぞ」
 銃声。みぞおちの辺りから、血が噴き出す。お互いとっくに真っ赤っかで、どの赤がどっちの赤かさえわからなかった。地面に散ったはずの肉や首はいつの間にか消え失せていて、だから、何故か消えないこの赤だけがオレが男を殺したという印だった。
『そろそろ気は済んだか?てかなんでわしがコイツらのおもりしてんの?』
『大本を返せばノッブが煽ったからでしょう?いや明らかなキチガイに拳で返しちゃった土方さんも土方さんですけど』
 空間全体に響くように、大殿と、大殿によく引っ付いている女の声が聞こえた。ムカつく。姿を見せないくせにヘラヘラ笑ってる敵。一等嫌いなものだ。大殿だってなんだって、それは変わらない。
「……殺すなよ」
「殺さねぇよ」
 血飛沫、肉片、脳髄、心臓、腸、骨髄、神経、動脈。男の、ありとあらゆる急所を抉る。己の、ありとあらゆる急所が撃たれる。とても楽しい。楽しいけれど、どうやらこの世界は何かを殺すのは褒められたものではないらしい。前に、殿様が悲しそうな顔をしていたのを見てしまった。だからオレは、なるべく、何かを殺さないように努めていた。
 けれど、今、この瞬間は、いくらこの男を殺しても良いらしい。向こうもこっちを散々殺しているので、おあいこというやつなのだろう、多分。
「だってお前を殺すので忙しいからな!」
「そうだな、俺もてめぇを黙らせるので忙しい」
 胴を二つに割った瞬間、頭が吹き飛ばされた。暗転、再生。男の内部で見てないものはないのではないかという程に殺し合う。返り血、血反吐、返り血。赤色は安心する色だ。だからいくら浴びたって構わない。さぁ、目の前の人間を殺せ!屠れ!食い荒らせ!それこそが己の存在意義であり、幸福だ!

『うっわー、えげつなー。三流スプラッタでももうちょっとお上品じゃろ』
『というかノッブよく普通に見れますね。沖田さんだんだん気分悪くなってきました』
『人斬りサークルの癖して軟弱じゃのー』
『てか本当に気分悪いんですけど。あ、吐く』
『それ気分悪いというかいつもの吐血じゃろ。っておい!わしに向かって吐くな!血まみれは奴らだけで充分じゃ!』


∴鬼を殺せ


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