◎短編にしようと思ったもの
正午前。『シリウス』はある物を囲んで座っていた。
「……その、えっと……話を聞いてくるべきだと思うな……?」
「僕は飲んでみるのが手だと思うよ!」
「すぐさま捨てるべき」
「聞いてから捨てるに1票」
各々が自分の意見を言う。全く意見が合わない。
それぞれの意見を聞いてから、スウィートは困ったように眉を下げた。
「……どうしよっか。セフィンさんから送られたジュース」
そう、4匹が囲んでいるある物とは、ジュースのことだった。
オレンジ色の美味しそうな色をしているジュースは、高そうな瓶の中に入っている。それは、スウィートが言ったとおりセフィンから送られてきたのだった。
するとシアオが1枚の紙切れを見た。
「『シリウス』様。知り合いから貰いました。美味しかったので是非とも飲んでみてください。……ほら、セフィンだって飲んでるって書いてるじゃん!」
「それが信用ならないからどうするか考えてんでしょ。ていうか敬語な時点で怖いわよ」
あくまでもジュースを飲みたいためか、シアオが言葉に勢いをつけて言う。しかしフォルテに吐き捨てるように言われ、黙る他なかった。
アルは紙とジュースが入った瓶を見てから、ため息をついた。
「……嫌な予感しかしない。絶対ふつうのジュースじゃないだろ、これ。飲んだってのは嘘じゃないかもしれないが……副作用がないとは書いてない」
「た、確かに……」
過去の事件があったからか、アルは妙に慎重だ。スウィートもそうらしく、異論は唱えない。
だがずっと置いておくわけにはいかない。そのため話し合っていたのだが、意見が割れてしまってはどうしようもない。
「……見た目は、美味しそうなジュースなんだよね」
「美味しそうだよね」
「セフィンから貰った物だから不味そうに見えるのよ」
「不味そうっていうか、普通のジュースに見えないんだよな。セフィンからだから」
「それはセフィンさんに失礼かな……」
「「どこが?」」
「……まあセフィンだもんねー」
「…………。」
セフィン≠ゥら、でなかったら、こんなにややこしいことにならないというのに。
うーんとスウィートが頭をひねる。解決案が全く見当たらない。
するとフォルテがおもむろに瓶を取った。じーっとジュースを見てから、にやりと笑みを浮かべてシアオを見た。
「乗り気なシアオだけに飲ませて、それで実証すればいいじゃない!!」
「そっか!!」
「シアオ!? ダメだって、毒見されようとしてるんだよ!?」
滅茶苦茶なことを言い出すフォルテと、全く気付かないシアオ。それでいいのかとスウィートが聞くが、シアオは「飲むのむー!」と完全に乗り気だ。
救いを求めてアルを見ると、「あー」と声をあげた。
「……ま、乗り気ならいいんじゃないか?」
「えぇぇ……」
スウィートが落胆の声をあげる。
しかしアルは「ほら見ろ」と言わんばかりに顎で示す。それに釣られるように視線を移すと、シアオがジュースをコップに注いでいた。
ダメだこれは。何をやっても飲む気だ。
そう理解したスウィートはもう何も言わなかった。
「匂いは……美味しそうな匂いしかしないけど」
シアオがコップに入った液体の匂いを嗅いで報告する。
そのときに顔をあげると、先ほどまで近くにいたはずの仲間がいなかった。見ると、2メートルくらい離れた場所でこちらを見ている。
「が、頑張ってね……!」
「さよなら、シアオ。後世で会わないことを願ってるわ」
「じゃあな。ご愁傷様」
「何で僕が死ぬみたいなことになってんの!? ジュース飲むだけなんだけど!」
オーバーな自身の仲間に対して声を荒らげるが、あくまでも距離を縮める気はないようだ。スウィートは何でか涙目だし、フォルテは諦めきった顔をしているし、アルにいたっては手を合わせている。
とりあえずジュースを飲めばいいんだ。そう思い、シアオは一気にジュースを飲んだ。瞬間、
「きゃっ!?」
「やっぱ下手物だった……!?」
「……飲まなくて正解だったな」
ボフンッと音をたててシアオが煙に包まれた。
スウィートは驚きの声をあげる。フォルテは顔を真っ青にし、アルはほっと息をついた。シアオの心配は皆無らしい。
そして煙がはれてきて、シアオがいた場所には
「……あれ?」
「ん?」
「これは……」
きょとんとする者、首を傾げるもの、頬をひきつらせる者。反応は様々だった。
3匹の視線の先には
「…………?」
シアオより一回り小さいリオル。ゆっくりと首をかしげて、不思議そうに3匹を見ている。
首を傾げるとき、ずるりとリオルの体から何かが落ちた。ソレは、シアオが身につけていたもので、だらしなくリオルの体にかかっている。
するとリオルは3匹の方を向いて、にっこり笑った。
「こんにちは――おばさん達!」
すぐさまフォルテに地面に沈められたが。
ここで力尽きた。オチがどうしても見つからなかったのでボツ。
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