見張り番

「さぁ皆。仕事にかかるよ♪」

「「「「「「おぉーーーーっ!!」」」」」」

 朝礼が終わり、弟子達が自分の持ち場につく。
 スウィート達も依頼を選ぼうと梯子のほうに行こうとすると

「あっ、『シリウス』! ちょっと来てく――」

「あぁ!?」

 ラドンに声をかけられーそうになったが、フォルテの鬼のような形相のせいで、ラドンは思わず言葉をとめた。
 今日のフォルテは昨日の依頼でほとんど寝れず寝不足なため、機嫌が非常に悪かった。

 アルはため息をついてからラドンの元にいく。スウィート達もアルについていく。
 フォルテは思いっきりしかめっ面だが。

「ラドン先輩、俺達になんか用ですか?」

「え……いや……。忙しいのなら、いい、ぞ……?」

 アルが聞くとラドンはフォルテの顔を窺いながら答えた。
 フォルテは目線があうと「何見てんだ」的な目でラドンを睨みつけた。
 ラドンは慌ててみるのをやめる。アルは内心「面倒くさ……」などと考えていた。

「早く用件言ってよ〜」

 とシアオがヒョコッと顔をだして尋ねる。
 「怖くて言えねーんだよ!」とラドンが心の中で叫んでいたのはまた別の話。

「えっと……じつは僕……今日用事があって、見張り番が出来ないんです。だから――」

「私達が代わりに見張り番をやるってことですか?」

 スウィートがハダルの言葉を遮って言う。
 見事に的中していたようで、ハダルはコクリと頷いた。

「分かりました」

 スウィートがそう言うと、ハダルは一礼してから穴を掘り、何処かに行ってしまった。
 ハダルがいなくなるのを確認すると、アルはラドンのほうを向く。

「で、見張り番って足型言う仕事ですよね?」

「あ、あぁ。客が来たら足型を確かめて、大声で俺に伝えてくれ。
 この穴から入って進んでいくと、光が差し込んでいる所があるから分かるはずだ」

「(あの穴からの光か……)了解。行くぞ」

 それだけ言うとアルはすぐに穴へ入っていってしまった。スウィート達もそれに続き穴に入る。
 中は真っ暗でよく見えなかった。アルが進もうとすると――

「うわっ! シアオ!? ちょっと突っ立たないでよ!」

「んな事言われても……わっ、スウィート!?」

「きゃっ!?」

 ……とても賑やかなやり取り。というか全員全く見えてなくて、前のポケモンにぶつかっているようだ。
 アルはため息をついてから体内に電気を溜めて、少しだけ体内から電気をだす。
 すると少しだけ辺りが明るくなった。これで一位置の把握はできるだろう。

「スウィート、ごめん! 大丈夫!?」

「な……なんとか大丈夫……」

 見るとスウィートは地面に倒れていた。
 シアオが謝っているところを見ると、シアオがスウィートにぶつかってそのままスウィートがこけたようだ。
 フォルテはスウィートを起き上がらせ「早く行くわよ」と先々行ってしまった。

「なんでお前が前なんだよ。電気ないと前見えないだろ。こけても知らないからな」

 とアル。

「ご、ごめんなさい……」

 とスウィート。

「また誰かとぶつかっちゃうよ?」

 とシアオ。フォルテがシアオに火の粉を喰らわせたのは言うまでもない。

 すると光が差し込んでいる場所を見つけた。
 スウィート達は光のほうに駆け寄り上を見る。すると上には穴が開いており、格子があった。
 シアオは行きを大きく吸い込んで

「ラトンーー! 穴のところまで来たよーー!!」

「俺はラドンだ! 間違えんな!!」

「あれ? そうだったっけ? まぁいいや」

 ラドンが大声で訂正したのに、シアオは全く気にしていない様子。
 声からしてラドンは怒っている。シアオはそれに気付いていないらしい。「お気楽なやつはいいよな……」とアルが思っていたのは本人しか知らない。

「……足型が見えたらそれを報告するんだね」

「ええ。あっ、来たわよ!!」

 上を見ると小さな足型が見えた。
 見た途端、シアオが大きく息を吸った。

「えーっと…足型はスカン――」

 と言いかけたシアオの口をスウィートが押さえた。フォルテは疑問符を浮かべている。
 アルはうんざりしたような顔をしながら息を吸った。

「足型はブイゼル! 足型はブイゼル!」

 シアオと全く違う答えだ。するとラドンから「正解だ」という声が聞こえた。
 スウィートはシアオの口にあてていた前足をはなす。
 するとシアオはスウィートの方に振り向き、不満そうな顔をしながら

「なんでスウィート止めたのさ〜!」

 と言った。スウィートは苦笑いしながら

「だって……違うかなって思って。それにアルが目線で「止めろ」って目で見てたし……」

 シアオはアルをキッと睨む。が、効果なし。それどころか睨み返されてしまった。シアオは身を縮ませる。スウィートは同情の目をむけてシアオの頭を撫でた。
 その様子を見て

(まるでお母さんと子どものようね……)

 とフォルテは考えた。
 それからはアルとスウィートが足型を見て、それをシアオとフォルテが大声でラドンに知らせるという作業になった。





「来客終了♪ 来客終了♪ 戻ってきていいぞー!」

 暫くするとディラの声が聞こえてきた。
 スウィート達はゆっくりと元の道を辿って戻るのだった。
 梯子を上がるとラドンとディラがいた。

「大丈夫か? 声はでるか?」

「はい」

「大丈夫です……」

「あー……。大丈夫っぽい。というより水頂戴。のど渇いた」

「べぇんぜんふぁいほうふしゃなぶい……」

 順にアル、スウィート、フォルテ……そして何を言っているのか分からないのがシアオである。原因は声の出しすぎだろう。
 ディラはフォルテに水を渡し、シアオのほうを向いて

「お前はアメトリィに診てもらえ。分かったな?」

「びょうふぁい」

 シアオが首を縦に振ったので分かった。
 アルはシアオを見てはぁ、とため息をついた。今日何度目のアルのため息だろ?とスウィートは呑気に考えていた。

「お前達ご苦労だったな♪ 結果は……なんとパーフェクトだ  初めてなのによく頑張ったな。報酬も特別バージョンだ♪」

 ディラは幸せの種とカテキン、命の種、そして500ポケをシリウスに渡した。
 シアオはそれを見て驚いた表情をし

「ぶぉんはみぼらっへききぶぉ!?」

「……すまん。何言っているか全く分からん」

 ラドンの言うとおり。何を言っているのか全く分からない。
 するとスウィートが小さな声で呟いた。

「『こんなに貰っていいの?』って言ってるんじゃないかなぁ……」

 その呟きは全員に聞こえていて、シアオはブンブンッと首を縦に振る。どうやら当たりのようだ。
 アルは興味半分で尋ねた。

「なんで分かったんだ?」

「えっと……口の動き……? 読唇術っていうのかなぁ?」

 「そんなもんがなんで使えるんだよ……」と全員が思った。勿論スウィートは全く気付いていない。
 こうして無事(?)初の見張り番と仕事が終了した。


 因みに。
 シアオの声はきちんと戻ったそうだ。スウィート曰く「治った途端煩かったみたいでフォルテに殴られた」とか。




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