領主になってから本や新聞を読むことが多くなった、とアスベルは思う。 子供の頃は、そういったものに興味があったのはヒューバートくらいで、自分はまったく読まなかった。騎士学校に入ってからは教科書などしか読まなかった。 しかし、改めてゆっくりたくさんの本や新聞を読むといろいろと勉強になる。国の情勢、昔のラントの様子・・・。今は親父の日記を見ている。 すると勢いよく執務室のドアが開いた。 「アアアアスベル!」そこにいたのはソフィ。めずらしく、かなり焦っているようだ。どうした?と落ち着いて声をかけると「ないの!」の一言だけ言われた。 「何が?」と聞き返すと、「シェリアからもらったクロソフィのしおりが・・・」と執務室の下の方をキョロキョロと見ながら進んできた。きっと床に落ちていないか探しているのであろう。 「クロソフィのしおり・・・。確かどこかで拾った覚えがあるんだが・・・」そうつぶやくと頭の中でラムダの声がした。(・・・貴様が今読んでいる本にはさまっているものではないのか?) え?と思い、本を見るとはさまっていた。先ほど拾ったものをはさんでいたらしい。(つくづく貴様は馬鹿だな)というラムダの声を無視し、「ソフィ、これか?」と声をかけるとさっきまで焦っていた顔が急に明るくなった。しおりを受け取ると笑顔で「ありがとう」と言った。 「どうして落としたんだ?いつも持ち歩いてるわけでもないのに」とアスベルは不思議そうに言う。「シェリアの家でもう一つ作ろうと思って、見本にするために持っていこうとしてたの」 「しおりを二つも作ってどうするんだ?」そうアスベルが聞くと、「秘密」とだけ言って執務室から出て行った。ソフィの持っているしおりのクロソフィは花びらの色が抜けきり、茶色になっている。そのため、もう一つ作るのだろうとアスベルは考えた。 そしてアスベルはさっきまで読んでいた本をまた読みながら、今まで俺に秘密、なんて言ったことなかったのに・・・。と少しショックを受けていた。 数日後 アスベルはまだアストンの日記を読んでいた。結構長いのだ。花の様子から昔の俺達の様子、事細かく書いてある。 すると執務室のドアがノックされた。はい、と軽く返事をすると、ドアの向こうから「フレデリックです。御来客の方がいらっしゃいました」と聞こえてきた。 「わかった、すぐ行く」と返事をして、本を閉じようとしてふと気づく。(何かはさんでおかないとどこまで読んだかわからなくなるな・・・)そこで数日前のソフィとの会話を思い出した。 (ここのページを開いてうつぶせに置いておくとクセがついてしまうが・・・。しょうがない)とアスベルは読んでいるページをぐいっと開き、本の背を上にするようにして机の上に置く。 急ごう、と思い小走りで行き、ドアを開けたところでソフィとぶつかってしまった。。「す、すまないソフィ」「ううん、大丈夫。あのね、アスベル・・・」期待した顔でアスベルの顔を見上げるソフィ。しかしアスベルは「すまない、今急いでいるんだ。後で話を聞くから、子供部屋にいてくれないか?」と言い、玄関に向かって行った。 ソフィは少ししょんぼりとし、仕事のことならしょうがないと割り切った。執務室のドアが開けっぱなしだったので、閉めようとしたところで、ソフィは机の上に置いてある本に気づいた。 (アスベル、こういう風に置くとよくないって前ヒューバートが言ってた)とソフィは本を直すために執務室に足を踏み入れる。 そしてソフィは本を持ち上げると、手に持っていた何かをはさみ、執務室から出て行った。 「こちらにどうぞ」アスベルが客人を執務室に通すと、「本を読んでいたのかね?」と声をかけられた。アスベルは慌てて「すみません!今片付けます!」と言うと、「いや、いいんだ別に。きれいなしおりじゃないか」となだめられた。 ふとアスベルは(しおりなんて挟んだ覚えはないが・・・)と思いつつ本を見ると、はさまっていた。クロソフィのしおりが。まだ作ったばかりなのか、花びらの色も抜けておらず、きれいだった。 数日前のソフィとの会話を思い出し、少し笑顔になった。(後でお礼言わないとな) 「きれいなクロソフィですな。確かラント卿の家の庭にもありましたね。後で見させてもらえるかな?」客人が窓の外の花壇を見ながら言った。 「もちろんですよ。なんせ、うちの花の母が育ててますからね。」と自信満々でアスベルは言うと、客人はそれは楽しみですな、と笑った。 その頃ソフィは子供部屋で(アスベルとお揃い・・・)と嬉しそうにニコニコしながら、大事そうにシェリアからもらったクロソフィのしおりを握っていた。 管理人のメッセージ 美咲 様より、我が駄文サイト1周年記念という事で アスソフィ小説を頂きました! わ、わ、ソフィが可愛いです! クロソフィの栞、綺麗で素敵ですよね! きっとソフィは頑張って作ったのでしょうね、 大切にするんですよ、アスベル(何 ラムダの突っ込みにも笑わせて頂きました 立派なボケとツッコミが成り立ってますな(笑 実は私、栞って結構好きなんですよ 最近だと本そのものにヒモがあって、それを栞代わりに出来ますが 私は本から挟んでる栞がはみ出してるのが好きだったりします なんでかはちょっとわからないんですけどね(苦笑 味が出てるって言えばいいのでしょうか…うーん、なんでだろ? こんなに味のある小説頂けて感無量です、 これからも、仲良くしてくださいませ! 素敵な小説、ありがとうございました! by翠玉 (2011/4/17) |