人気のある街中を、アスベルとソフィは歩いていた
身長差から生じるはず歩幅の違いは存在しない、アスベルがソフィのペースに合わせてるのだ
どちらが先に行くでもなく、ただ横に並びながら歩く

街中を歩いている目的なんてものはない、ただの散歩というやつだ
折角の旅なのだ、色々と見て回るのはその醍醐味とも言えるのだから楽しまなくては損である

周りの賑やかさに自然と心は軽くなる、楽しさと明るさで包まれた街道
ざっと見まわしただけでも多数の商店等が視界に入る、
客引きをしようと周りの喧騒に負けないぐらいの威勢の良い声が聞こえてくる事も珍しくない
自然と周りを見渡してしまう、それに伴い歩調も少しずつ遅くなり、
徐々に先ほどまで同じだったペースが乱れていく、
それにアスベルが気付いたのはソフィと二、三歩程の距離が開いてからだった
ソフィにとってはアスベル以上に珍しい物などがたくさんあるのだろう、
ある一角に視線を向け、しばらくそうしてたかと思えば今度は違う方へ視線を向け、を繰り返していた
アスベルの視線は見失わないようにとソフィから目を離さないようにしていた

ややあって、ソフィがアスベルの方を向き、やや離れた距離を詰め始める、
そして不意にソフィの左手がアスベルの右手を取ってきた、つまり手を繋いできたのだ
だがその後、またある方向へと視線を向け、そこから外さなくなった
その視線の向く先が手を繋がれる前に見ていた方向と一致している事に気付き、
アスベルもそちらへと視線を向けると仲の良さそうな母親とその子供――親子の姿がそこにあった
おそらく買い物に来たのだろう事はわかった、母親の手には重そうな荷物がぶらさがっている
だがその一方でもう片方の手では子供の手を取り、何事か話してるのか楽しそうな表情を時折浮かべる
両手に荷物を分けて持てば楽であるだろうにも関わらず、わざわざ子供の手を取るのを選んでいるようだ
自然と頬が緩む、そんな光景、母親は子供の手を引きながら雑踏の中へとその親子の姿は消えていった
自然とソフィに取られた手に少し力を入れ、優しく握り返した、その感触が伝わったのかソフィはアスベルの方を見た

「行こうか、ソフィ」
「うん」

歩調も合わせて、ただただ歩く、二人で一つのそのペースで


この手は導くために繋いだものではない
共に歩いていこう、という意思の元に繋がれたものだ

だから互いに引き合う事はない、
それでも、ほとんど力の籠っていない互いのただ合わせてるに等しい
その手にもあるのは表立って出ないけど、それだけに深くて確かな繋がり




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