そよそよ、と心地良い風がアスベル達を優しく撫でる
今は見通しの良い海の見える場所で一行は休憩を取っていた

風にのって運ばれてくる微かな潮の香り
天気も文句のつけようが無いぐらい良い

草の生い茂っている場所に腰を下ろす者
丁度いい岩に腰かける者
どこまでも続く青い海をただ見る者

互いに目の届く範囲に居るが行動はそれぞれバラバラだった
しかし全員がのどかな風情を確かに楽しんでいて、暖かな空気が包んでいた

「お〜海ってやっぱり広いねぇ〜」
「本当、どこまでも青しか見えないわね」

手を翳しながら海の彼方を見通すパスカル、
シェリアも海の方を見てどこまでも続く深い青に感嘆して

「あ、花が咲いてる」
「本当だ」

ソフィがひっそりと道端に隠れるように
しかしそれでいて鮮やかにその花弁を広げている綺麗な一輪を見つけた
アスベルも後ろからそっと覗きこむとその一輪が視界に入る

「やはり、こういうのを見つける楽しみは旅ならではだな」

アスベルの後ろからマリクも覗きこんできた
そうですね、とアスベルは頷く
旅が楽しい、と感じるのはこんな時だ
信頼できる仲間たちと共に歩んで、その目で見る事は楽しい
例え、今見つけたひっそりと存在する一輪の花というどんなに小さな事であっても
そこにいって実際にこの目で見なければ知り得ない事だ

「…悪くはないですね、こういうのも」

ヒューバートが背を向けたままそう言った
表情はわからないが、今その表情は和らいでいるであろう事は
声の調子から手に取るようにわかる、一緒に旅してきた仲間だからわかる事だ
その言葉を聞いた者は全員心の中で肯定した、皆楽しいのだ

「さて、そろそろ行きませんか、皆さん」

岩に腰かけていたヒューバートがそっと腰を上げて一同を見やる
表情はいつもの仏頂面に戻っていたが、やや平常より穏やかな表情に思えた

「そうだな、行こうか皆」

アスベルも立ちあがる、それにつられるように次々と座っていた者が立ちあがる

準備が整い次第一行はまた歩き出した、前へ進むために

彼らはこの先で今度は何を見るのだろうか


そんな彼らを優しく後押しするように
そよそよ、と変わらず穏やかな、暖かな風が包んでいた


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