ストラタとは、砂漠のど真ん中に首都を構える国である
とはいえ大蒼海石の恩恵あって、首都――ユ・リベルテは砂漠の街とは思えない程暑さはマシである
それでもラントや、バロニアといった、気候が比較的安定している場と比較してしまうと
やはり、暑い方の部類に入るのだろう
ストラタ軍がラントに進駐していた際、軍内部ではウィンドルの安定した気候が羨ましいと零す者も居たと言う
事実、少年時代までラントで育った自分には、
ストラタに来て間もない頃はその暑さに辟易した時もあった
最も7年もそこで軍人やっていればおのずと耐性ができて、多少の暑さぐらいなんともなくなった
慣れてしまえば、それまでなのである

だが、その暑さに対する慣れは、裏を返せば逆の事を言えるわけで
要するに、今、何が言いたいかというと

――さ、寒いです…!!

自分は寒さに一切免疫はない、そう述べたいのだ

徐々に自分の第二の故郷とは正反対の地、ザヴェートへと航路を取る船の上で、
ヒューバートは徐々に強くなる寒気に、ぶるっと身を震わせたのだった




そんな自分が、何故わざわざ寒冷の地へと己が身を投じているのか当然、理由がある
彼女に――パスカルに、会うためだ

別にラムダの脅威を退けて以来、離れてしまったから会いたくなった、とか
シェリア辺りが目を輝かせそうなロマンチックな理由ではない、断じて違う
これは、大統領からの依頼なのだ、直々に書状も預かっている

それはともかくとして、事のあらましはこうだ
以前、ストラタという国を支えていると言っても過言ではない、我が国の大輝石が不調を起こした事がある
あの時は、我が兄達――厳密に言えばパスカルだが
彼女のお陰で、研究者たちが全く解明できなかった不調の原因を容易に取り除く事が出来た
もっとも、本調子へと回復した大蒼海石の原素をリチャード国王が吸収していくという前代未聞の事態も起きたわけだが…

脱線した、話を戻そう
その時のパスカルの功績は当然ながら大統領の耳にも入る事となり、
大統領もアンマルチア族の技術力の高さに改めて舌を巻いたと聞く
密かに、仲間の実力が、彼女の能力が、大統領に認められているのは誇らしく思った
決して、口になど出してはやらないが

人々の生活にとって輝石は非常に大切で重要な資源である
大蒼海石に異常をきたしたことで、輝石採掘量の多いラントに進駐するという事態にまで発展した事から
いかに輝石が国にとって欠かせない物かは明白と言えるだろう
そのため、大統領は大蒼海石にまた異常が現れやしないかと、
ラムダの脅威が去り、ウィンドル、フェンデル、そしてストラタの大輝石にも原素が戻り
輝きを失った各国々の大輝石が再び壮麗たる輝きを取り戻して以来、密かに懸念しているのだ

故に、現段階で異常は見られないか
パスカルを招き、大蒼海石のメンテナンスをしてもらえないかと大統領は考えたのだ
この提案について、大統領からその提案について自分の意見を求められたのも記憶に新しい
「パスカルさんならば、信頼できますよ」と自分も太鼓判を捺した
そうか、と満足げに大統領は頷き、その時にアンマルチアの里への使者として、自分が抜擢された
仲間内で顔がきくと大統領は考えたのだろう、ごくごく自然な流れだ
もしも、また異常をきたす様な事があれば、またラントに目が向けられるかもしれない
あそこは、故郷はもう、兄に全面的に託した、できるならそれは回避したい
それに彼女に――仲間に会えるのも悪くは、ない
断る要素もなく、二つ返事で了承した
その後幾日を取って、大統領がパスカル宛ての親書を作成し、
「よろしく頼むよ」と述べながら自分に親書を託した時の大統領の意味深な笑みが少し気になったが
そのような瑣事を大統領にわざわざ聞くのも憚られるので、特に気にしない事にした

いざ、ザヴェートまで行こうとした時、手土産でも持っていくかと、
珍しく気の利いた事を考え付き、彼女の好物である取り立て新鮮なバナナを加えた荷物を手に、
ヒューバートはザヴェートへの船に乗船したのだった

ザヴェート港に到着後、相変わらずの銀世界の広がり様に
バナナって凍らせると釘が打てましたよね、と
寒気を紛らわせるような思考(現実逃避ともいう)を織り交ぜつつ、ザヴェートへと歩みを進めた
それでも相変わらず衰えない寒波に、半ば辟易したものだが
ヒューバートは無事、アンマルチアの里へとたどり着いたのだった
ザヴェートに到着してから、今度は雪山を登る必要があったが、
亀車を利用することで随分と楽になった、世界に散らばる行商人達に今回ばかりは深く感謝したものだ

あの旅で、アンマルチアの里には幾度か足を踏み入れている
そのため、パスカルと行動を共にしていた自分達の顔を里の者は全員覚えているようで
ヒューバートが里を訪れると、里の物達に一様に人懐っこい笑顔と共に挨拶をされた
パスカルといい、基本的に人見知りをしない集団なのだろう
ほのかな歓迎ムードに当然悪い気はせず、心持ち表情を緩め、一人一人に丁寧に挨拶を返しつつ、歩みを進める
目的地はもちろん、パスカルの部屋
歩みを進めて間もなく、パスカルの部屋の扉前に辿り着いた

「パスカルさん、僕です、入っても構いませんか」

扉に軽くノックをしつつ中に居るはずの住人に呼びかける
いくらなんでも、返事がないまま無遠慮に部屋に踏み入る事はしない、最低限の礼儀は欠かせない
だが、そのまま扉で待つ事数秒、中から一向に返事は無い
嫌な予感がする、まさかこれは

――留守、なんでしょうか

彼女は本当に自由だ、自由が服を着て歩いてると言って過言ではないだろう
そしてそれ故に有り余るほどの行動力がある
なので事前に「今日用件があって、あなたの部屋を訪ねます」と手紙を出しておいたのだが
まさか、読んでいないのでは、そうだとしたら

「パスカルさん、居ませんか?」

こんな体を刺すような寒さの中、ここまで来て無駄足というのは正直笑えない事態だ
体面上は平静を装いつつも、内心焦りつつ、再度呼びかけるがやはり返事は無い
こうまで来ると最後の可能性として、部屋に居るが返事は出来ない状態に彼女があること
つまり、中で寝ているのではという可能性に賭ける他ない

「失礼、しますよ」

正直許可なしに入るのは気が引けるのだが、中に入らせてもらう事にする
大統領閣下の命という大義名分を引っ提げて、意を決し扉をあける
パスカルは出かける際、扉にロックをしたりとかはしないようなので、扉に関しては常時開きっぱなしだ
少々危機管理が乏しいのではと思うが全体的に、のほほんとしたこの里では無用な心配なのかもしれない
そして部屋に足を踏み入れたヒューバートが部屋を見渡して最初に思った事は

――た、確かに、あの時は片付いていたんですね…

いつぞやか、パスカルの部屋に立ち入った時の部屋の有様と現在の部屋を比較すると
確かに、あの時の部屋は片付いていた、自身を持ってそう言い切れる
足の踏み場がない、とはまさにこの事だろう
床にはなんなのかよくわからない部品やら、研究書と思われる書物やらが
ほとんど敷き詰められているという表現が近いぐらいに散乱していた
その惨状といったら、過去訪れた時より目に見えて悪化している
姉は今でもこの無頓着さに頭を悩ませているのだろう、その様子が容易に目に浮かぶ、こっそり同情をしてしまった

なるべく、部屋の床に散乱している物の間に見える僅かな床面を足場に選び、
部屋の中へと更に、そーっと足を踏み入れる、バランスを崩しては、ならない
なんでそんなおっかなびっくりに一歩を踏み出さねばならないかと言うと
前にパスカルが姉に対して嫌がらせとして、とんでもない罠を仕掛けていたという話があったからである
兄から聞いたが、まず掛ったらまるで動けなくなるものだったらしい、笑えない冗談である
もはや嫌がらせの域など軽く超えている、もし自分が掛ったらと思うと、ぞっとする
故に周りの物に極力触れないように動く事を心がけた、そろりそろりと足を慎重かつ確実に動かして、
ようやくの思いでデンジャーゾーンの真ん中ぐらいまで到達した所で周りを見渡す
すると彼女の姿の代わりに、別のもの、なにやら見覚えのある手紙を低めの棚の上に見つけ
また必要最低限の移動だけして、腕を伸ばして、それを手に取った
内容は、自分がここに訪れる事の旨を書き記した手紙だった、道理で見覚えがあるはずだ
傍らには開封された封筒、この封筒に自分は手紙を入れて送った
開けられているという事は、まず間違いなく彼女は読んだはずである
にも関わらず、彼女は今この部屋には見当たらない

まさか、とヒューバートの中に最悪なシナリオが構築されつつあった
手紙を読んだにも関わらず、持ち前の天然さで忘れてるのでは、と

冗談ではない

先にも述べたが、こんな身を刺すような寒気の中、
やっとの思いでここに来たと言うのに無駄足で終わるなど、本当に笑えない話だ
部屋の危険性を思わず忘れ去り、足場が悪いのも気にせずヒューバートは部屋中を探す、
ここまでの自分の労力が徒労に終わるかもしれない、という焦燥感と共に

「パスカルさん、どこですか!」

彼女の名を呼びつつ、色んなところを徹底的に捜した
物陰、やや乱雑に詰まれた研究書の影、棚の中、やけに分厚い研究書の中
徹底的に捜し過ぎて一部、そんなところに人間入れないだろ、と突っ込み飛ぶ事確実な所まで調べたが
ここまでの苦労が徒労に変わりそうな危機感に晒されているヒューバートにはそんな事知る由もない
ついには一度調べたところまで、知らず知らずに再度調べてしまうという状態にまで発展した所で

「やっほー弟くん」

部屋の扉の方から、探し求めていた声が聞こえた、気がした
現在進行形で持ち上げている分厚い研究書7冊ほどの束という、
誰が持ってもまず、重いと感想を述べるだろう、ずしりと来る重量を忘れ、ぐるんと振り返ると

「遅くなっちゃったね、ごめんごめん」
「パスカル…さん?」

確かにそこには、捜し人が居た
自分が必死こいて(多分におかしい)捜索していたことなど露知らず、彼女は呑気に手をヒラヒラさせて
はっと我に帰った途端、両腕にかかる凄まじい重量の事を思い出し、崩さないようにその辺にそっと置いた
「弟くん、力あるねー」と呑気な賞賛が飛んできたところでヒューバートは彼女に詰め寄った

「どこに行っていたんですか!」
「いやーまさか広場に行ってる間に入れ違いになっちゃうなんて思わなくてさ〜」

…広場?
広場、というともしや、何故かチョコレートの噴水のあるこの里の広場のことだろう
だとしたら、自分は

「やっぱ頭使った後って甘い物だよね〜、コップ10杯分ぐらいもらっちゃったよ」
「…食べ過ぎですよ」

とんでもない早合点の上に、いらん労力を重ねてしまったという事だ
思わず脚の力が抜けそうになったが、それはなんとか堪えた
しかし肩の力が抜けてしまうのは耐えられなかった、思わずガクリと肩を落としてしまい
疲れた突っ込みを飛ばしつつ、脱力するヒューバート
食べ過ぎ、というよりこの場合飲み過ぎというべきかと少し冷静な部分で考えながらも
訂正する気もおきず、問答無用でその訂正内容を葬り去った、言葉にする気にもなれなかったからだ
部屋に訪れた際、彼女がいないのなら少しぐらい待ってみれば良かったのだ
そうでなくとも、里の者にパスカルがどこに行ったか聞けばすぐに居所は知れた筈である
なのに自分と来たら、約束忘れて遠出をしたと勝手に思い込んでしまった
とんでもなく恥ずかしい勘違いによる羞恥と彼女に対する罪悪感の波が押し寄せてきた

「ところで、何か落とし物? すっごい必死に何か探してたからさ」
「…いえ、どうやら気のせいだったようです」

捜していたとはいえ、家探しするような真似までしてたというのに、当の本人はまるで気にしていない様子である
相変わらずのあっけらかんとした性格に喉まで出かかった謝罪の言葉が引っ込みそうになったが
それはいくらなんでも人として欠けると思ったので、付け足しでその事について「すみません」と述べると
「平気平気〜」と微塵も気にしていない様子で返された、なんとも、彼女らしい

「で、弟くん、用って何かな?」
「ああ、そうでしたね、これを見てくだされば、わかるかと」

ひとまず自分がここまで来た事が無駄にはならない事に安堵感を抱いて、大統領の書状を手渡す
横に筒状に丸められたそれを早速パスカルは広げ、書状に目を通し始めた
読み進めるごとに彼女が相槌を打つ様子を眺めながら、彼女が事態の把握をするまでじっと待ち続けて数刻
「うん」と一度大きく頷いて、書状から目を離して

「そういうことね〜、つまりあたしにストラタの大輝石を診て欲しいと」
「事情を飲みこめて頂けたようで安心しました、それで、引き受けてくれるんですか?」
「もちろんOKだよ〜弟くんの全幅の信頼を裏切りたくもないもんね」

それはよかったです、と思わず紡ぎそうになって、止めた
気になる発言があったからだ、今の彼女の発言に

「ちょっと待ってください、僕の信頼とは何のことですか?」

確かに、信頼している
これまでの旅の間に見てきた彼女のマルチな才能、そして、仲間としても
だがなんだか気恥かしく、彼女に堂々と言った覚えは無い

「え、だってここに書いてあるよ?」

何が、と思わず言いたくなったが我慢してそれは抑え込んだ
今はとにかく、彼女の親書の読み上げを聞き取ろうと己の聴覚に全神経を注ぐ
本来親書の内容など聞いてはならないだろうが、用件は要訳すれば「大輝石診てくれ」と簡潔なものであり、
事情は自分もよく知っているので聞いても問題ないと判断した
なにより、何が書かれているのか非常に気になった、一体彼女に何を――言い方は悪いが、ふきこんだのか
だが、ついで彼女から発せられた親書の内容とは

「『ヒューバートは、君にとても信頼を寄せているらしい、
どれぐらいかというと、空の天辺から海の水底まで、
いやもしかしたらそれ以上あるぐらいの、とても深く大きなもののようだ
私が今こうして君に我が国の大輝石を診てもらう事の決め手となったのは彼の進言に他ならなくてな、
君なら信頼できる、と全力でそれはもう力強く君を推したのだ、君以外ありえない、と
他人を滅多な事では信頼しない、あのヒューバートの推薦に、私は心を揺り動かされたよ
是非とも、彼の全幅の信頼の下に、我が国の大輝石の件を引きうけてはくれないだろうか』だって」

――大統領閣下ーーー!!!

間違っていないようで、盛大に色々と間違えすぎな、とんでもなくぶっ飛び、脚色上等な内容に
途中から耳を塞ぎたくなった、なんなのだ、この聞くに堪えない赤面必須の文字の羅列は
あの親書を渡した時の笑みはこういう意味だったのか、手遅れな今になって十分すぎる程思い知った
大統領は普段は国の代表に在る者として、堂々たる風格を兼ね備えている
いざ国内で問題が起こったりすると、ただ報告を待つのではなく
自ら現地に赴いて自分の目で状況を見、把握するという行動力を買っている国民も多い
だが、以前大統領の依頼の関連で、養父を疑ってしまったことへの罰として、
妙としか言いようのないオブジェを渡したりと、妙にお茶目な所もある
だが、よもやそのお茶目がここで発揮されるとは、夢にも思わなかった

もちろん色々突っ込みどころも訂正するところもあるのだが(主に信頼の度合)、
どれから修正していいやらわからず、しどろもどろになっていると
「こんなに信頼されて、嬉しいよ〜」と喜色満面な彼女を見ていると、もはや通り越してどうでもよくなり

「…それは良かったです」

半ば投げ槍に肯定したのだった、別に彼女を信頼しているのは、嘘ではないから
しかし、そのような自分の発言でも更に嬉しそうにする彼女に幾分遅れて羞恥を感じたが、
何も言い訳せずにすることにした、不可抗力とは言え、折角素直な気持ちを曝け出したのだから

「ところでさ、なんか甘い匂いがするのは気のせいかな?」
「…え? ああ、これのことですかね」

精神的に色々よろしくない騒動の影に危うく隠れてしまい、出すのを忘れそうになったが
彼女への手土産を荷物から出して差し出した、すると予想通りの反応で

「わ〜! バナナだ〜!」

目を輝かせて、受け取ったのを見て思わず頬が緩んだ
黒い斑点が丁度良いぐらいに出ていて、少し嗅覚を澄ませば仄かに香る、優しく甘い匂い
折角なのだからと、少し多めに取ってきた甲斐はありそうだ
ここに来るまでに、流石にちょっと多かっただろうかと密かに懸念していたが
この喜びようなら杞憂に終わりそうである

「喜んで頂けたようで、良かったです」
「ありがとね〜弟くん!」

謝辞を述べながらも、小躍りしていた彼女が、
突如次第に大人しくなり「う〜ん」と何か考え込む仕草を見せる
何事かと気になったので思わず訪ねてしまった

「どうかしましたか?」
「なんかさ、もらってばかりなのも何だよね〜って思って」

ああ、そういうことか、と内心で頷きつつ「気にしないでください」と述べようとしたが
なんだか段々大真面目に考えこむ彼女を見て、思わず余計な一言を付け足してしまった

「あんなに喜んで頂けただけで、こんな寒い中来た甲斐があります、だから気にしないでください」

一言、というにはちょっと多かったかもしれないが嘘偽りない、自分の本音だ
要は気に病む必要はない、と述べただけなのに、この発言を聞いて彼女はポンっと手を叩いた
なんだ、と考えていると彼女は部屋の奥へ行って、何かを持って戻ってくる、そして

「そうだ、これあげるよ〜」
「はい?」

何を、と紡ぐまでもなく自分の首にふわり、と何かが巻かれる感覚
柔らかで心地よい感触を覚えた、その正体は

「マフラー…ですか?」
「うん、これがあればきっと暖かいよ」

彼女も愛用している、マフラーだった
自分の首から垂れる、編み込まれた毛糸を手で掬い上げる
思わぬお返しに、なんだか頬が熱くなった、決して今首に巻かれているマフラーの所為ではなく

「あ、ありがとうございます」
「これで寒い中も、へっちゃらだよ」

なるほど、先ほどの自分の「寒い中来た」という発言を受けたのか、と少し冷静な部分が分析した
暑いストラタでは用無しになってしまうだろうが、
彼女からの贈り物というだけで、どこか気恥かしくも嬉しかった、それだけで、価値があった

「ねえねえ、どうせなら一緒にバナナ食べようよ」
「それは構いませんが、いいのですか?」
「もちろんだよ〜一緒に食べたほうが楽しいじゃん!」

はい、と一房のバナナから一本もいでこちらに手渡してきた
反射的に受け取ると、更にもう一本もいで、
手慣れた様子で皮を剥いて、パスカルはバナナを頬張り始めた、それはもう美味しそうに
その様子に、ふっと少しだけ笑って、ヒューバートもバナナの皮を剥きにかかる

――ここからストラタまでの道のりが、少し憂鬱でしたが

また、この寒い中往復するのか、と半分嫌になってたが、それはもう無さそうだ

今こうして自分の首に彼女の手によって巻かれた、


暖かな温もりがあれば、寒いのも悪くはない、
なんて考えてしまってるのだから
















あとがき

元はクリスマス用に書いていて、
間に合わずに少し軌道修正&書きなおしたものです
うん、駄目だな、私(苦笑

しかも個人的に書いてて楽しかったのが
大統領の親書の内容だったりする、それが私(おい

大統領、最初はどこか親しみを感じさせながらも、
厳格な人のイメージだったんですが
「秋ブレード魚」の一件で親しみの部分があらぬ方向に膨れ上がりました

未来への系譜編で、ヒューバートに好印象を抱いているようなので
些細な事だったら、少しぐらいお茶目な面発揮するんじゃないかな〜っと
そんな私のイメージの暴走でした(笑

お読みいただきありがとうございました!
(2010/12/28)
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