独白系
私は、貴方の声が苦手だ。
耳から入り鼓膜を震わせたそれは、すぐに背筋を通り全身に響き渡る。悪寒とも快楽とも似通った感覚に身を捩ろうと、容易く侵食されていき、果てには支配されてしまう。
私は、貴方の目が苦手だ。
真っ直ぐなその瞳に見つめられると、何も言えなくなる。身が竦んでしまう。全てを見透かすように、いや、見透かしているのだと断言出来てしまうほどに貴方の目は鋭く恐ろしい。
私は、貴方の手が苦手だ。
まるで脆い硝子細工に触れるようなひどく優しいその手つきに、浅ましい私は簡単に身を委ねてしまう。差し伸べられたその手に縋って何もかもを放り出したくなる。そんな資格、私にはないのに。
私は、貴方が苦手だ。
何故、諭すような声で私を呼ぶのだろう。
何故、愛おしそうな目で私を見るのだろう。
何故、慈しむような手で私に触れるのだろう。
どれだけ疑問を投げかけても。
どれだけ回答を返されても。
私はまだ、貴方を理解することができないでいる。
[いつか答えに辿り着けたなら]