シリアス。死ネタあり。
「なんだ。まだ泣き虫直ってないのか」と君は笑った。
違う、僕はもう、泣き虫じゃない。
そう否定したかったけれど、次から次へと溢れる涙のせいでその言葉を告げることはできなくなった。
ぼろぼろと零れ落ちていく水滴が視界を歪めていく。ついには嗚咽まで漏れ出して、もうしゃくりあげる身体を止めることはできそうになかった。
でも、これだけは言わせてほしい。
「もう、二度と会えないかと思った」
嗚咽まみれで、途切れ途切れ。なんだかみっともないな。
少し困ったような顔をした君は「ばかだな」と呟いて、僕の方へ手を伸ばそうとした。
けれど、それは叶わない。だから、僕の方からその手を取った。
昔と何一つ変わらない、優しくて温かい、君の手を。
「もう、会うつもりなんて、なかったよ」
「うん、知ってたよ」
「知ってたのに、会いにきたのか」
知っていた。君は僕に、もう二度と会うつもりなんて無かったことを僕は知っていた。
それでも、会いたかった。
例え君が嫌がろうとなんだろうと、僕はどうしても会いたかったんだ。
「ああ、昔からそうだった。人の話なんか聞かないで、頑固で」
変わらないのは僕だけじゃない、君だって何も変わってないじゃないか。
人のことは言える立場じゃないよ。
「そうかな……。ああ、そうだと、いいな」
たった数拍。
時間にして30秒にも満たない沈黙。
だけど、僕にはとても長い時間のように感じた。
「さいごに、きみにあえて、よかった」
呟くように、囁くように。君は、ゆっくりと、紡ぐ。
もう、声とは呼べないその音に耳を凝らす。
一言一句聞き逃さないように。大切な大切な君の言葉を。
「ありがとう、―――」
[サヨナラを告げることすらできなくて]