愛されたがりの天使
「紅葉、人一倍愛されたがりだもんね」
「それが俺の生き方なの」
「怖がりのくせに」
「それは和葉も一緒じゃん」
愛されなくなるのが怖い俺と、愛されるのが怖い和葉。
ふと、なんで愛されるのが怖いのに泰弘をずっと好きでいるのか不思議に思った。
「ねぇ、和葉?」
「なに?」
「なんで泰弘をずっと好きでいるの?」
「泰弘になら愛されてもいいかなって思ったから……かな? それに、泰弘にこのこと話したら諦めて俺に愛されろって言われて……なんかさ、泰弘なら大丈夫かなって思ったんだよね」
「そう、なんだ……」
意外だった。
泰弘らしい言葉だし、泰弘なら和葉のこと捨てないんだろうなって気はずっとしてた。
でも、和葉がこんな風に変わるなんて思わなかった。
自分の事話すのもそうだし、ノロケるとは思わなかった。
「だから紅葉もさ、自分のペースでいいと思う」
「なにそれ。和葉のくせに」
「不器用なお兄ちゃんにアドバイスしただけだし」
「和葉に不器用とか言われたくないし」
和葉だって恋愛に対して不器用なくせに。
泰弘の言葉があったから変われたくせに。
なんて。
今の今までロクに恋愛なんてしてきたことない俺が言えるようなことじゃないけど。
「……ありがと」
「どういたしまして?」
「なんで疑問系なの?」
「なんとなく」
そう言って笑った和葉。
やっぱり和葉、変わっちゃったな。
でも今の和葉の方が好きだったりする。
「あ、そうだ紅葉」
「なに?」
「おかえり」
「!?」
たった4文字
そのたった4文字の"おかえり"を言われただけなのに涙が出てきた。
嬉しかったんだ。
和葉に受け入れてもらえた事が。
和葉に「おかえり」と言われた事が。
「ただ、いま」
涙を拭ってへらっと笑うと、和葉も笑ってくれた。
はじめて恋に気付いて、和葉に気づかせてもらって和葉に励まされて、和葉の存在が俺の中で大きなものになる。
やっぱり双子は片割れの思ってる事が分かるのかな? なんて思った。
ー END ー