愛されたがりの天使


「麺が伸びないうちに食べちゃお?」
「あ……うん」



箸を渡されて、向かいの席に座った和葉と一緒にラーメンを食べていく。
久々に一緒に食べるからなんか変な感じ。
お互い無言で食べ終わると、和葉が器を下げて洗い物をしていくのをぼーっと眺める。
そうすると目が合って、和葉が不思議そうに首を傾げた。



「どうかした?」
「えっ、と……あのさ、もういっこ聞いていい?」
「じゃあちょっと待って。もうちょっとで洗い物終わるから」
「うん」



和葉を見てたら、なんとなく今日勃たなくなった理由がなんなのかわかる気がして聞いてみることにした。
そして、洗い物を終わらせた和葉がまた向かいの席に座った。



「なに? 聞きたいことって」
「和葉はさ、勃たなくなった事……ある?」
「……え?」
「だからさ、ヤってて勃たなくなった事ない?」
「別にないけど……紅葉、勃たなくなったの?」
「……うん」



和葉の言葉に頷くと、和葉はそっかぁ……と呟いて何か考えてるようだった。
なにかあるのかなって思って次の言葉が出てくるのを待ってると、和葉が俯いていた顔を上げた。



「それってさ、誰とヤっても勃たないの?」
「……たぶん」
「たぶん?」
「その、さ……1人だけ、違うの」



名前は言っちゃいけない気がして、名前だけ伏せて全部話す事にした。
思ってる事も、なにもかも全部。
話し終わって和葉をちらっと見ると、何故か笑顔だった。



「な、なに……?」
「紅葉、その人の事が好きなんだね」
「は、はぁ!?」



和葉から言われた言葉にかあっと赤くなる顔。
それを誤魔化すように机をバンと叩いて衝動的に立ち上がる。



「さっきの話聞いてなんでそこに辿り着くの?」
「え、だって……一緒だもん」
「いっ、しょ……?」
「うん、一緒」



ケロッとなんでもないように話す和葉に身体の力が一気に抜けてストンと椅子に座り込む。



「どういう、こと?」
「オレもね、泰弘にしか勃たないよ。ずっと」
「……ほんと?」
「嘘ついてどーすんの?」



なんて言って笑う和葉。
そんな和葉見てるとおかしくないのかな、なんて思えてくるから不思議。



「紅葉もちゃんと恋愛できたんだね」
「なにそれ。どういうこと?」
「だって紅葉、大切な人とか好きな人作らないって言ってたから……だからなんか嬉しい」
「だってそれは……ずっと愛してくれる保証ないから……怖かったんだもん」



愛されてないと怖いから、不特定多数の人に偽りでもいいから愛して欲しくて売りを始めて、そこからたぶん……和葉とずっとすれ違いの生活だったと思う。

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