愛されたがりの天使


でも、あれから何度か家に帰って和葉と出くわすけど特になにも言われなくて、日常的な会話しかしてこなくなった。
だから、今でも和葉がなに考えてるかわからない。



「ねぇ、和葉」
「なーに? ご飯ならもうちょっと待ってて」
「ご飯じゃなくてさ、その……聞いてもいい?」
「なにを?」



今なら聞いても大丈夫かなって思って聞こうと思ったけど、どうやって聞こう……
和葉だからきっと話してくれると思うけど……



「あのさ、前に俺……和葉にすごい色々言ったじゃん?」
「うん」



意を持って恐る恐る俯きながら話し出す。
キッチンからトントントンッてリズムよく包丁の音が聞こえてくるから、和葉は料理しながら聞いて相槌をうってくれてる。



「その日からさ、和葉……なにも言ってこないよね?」
「うん、言ってないよ」
「なんで……なにも言わないの?」



世間一般では双子なんだから意思疎通できてるんだろってよく言われるけどそんなこと無い。
双子だからって意志を持ってる2人の人間なんだから分からないことだってたくさんある。
和葉は特に……なにも言わないから余計に分からないんだ。



「紅葉だから」
「え……?」



俺、だから……? なにそれ?
……どういうこと?



「紅葉だから、もうなにも言わないで待ってる事にしたの」
「なん、で?」
「紅葉はさ、オレと違って人に甘えるの上手だからたくさんの人に愛してもらえるでしょ? だから、紅葉が疲れた時とか休みたい時にいつでも帰ってこれる場所にしようと思って」
「なに、それ……」



俺がいつ帰ってくるかも分からないのに……なんでそんなことしてるんだろ。
和葉だって俺と違って器用だからたくさんの人に必要とされそうなのに……



「ここは紅葉の家でもあるんだよ。それに、オレは紅葉の唯一の家族で兄弟だから。だから紅葉の全てを受け入れるべきだって思ったの」
「……ばか、じゃないの」
「うん。オレもそう思う」



和葉はそう言うのと同時に目の前に湯気立つラーメンが置かれた。
半熟卵とメンマと薬味ネギの乗ったシンプルな醤油ラーメンだった。

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