愛されたがりの天使


もう誰も愛してくれないなら死んだ方がマシだ。
なんて思って死に場所を探し歩きながらスマホを弄っていると、1通のメールが届いた。
何度か抱いてもらって、今までの誰よりも気持ちよかったお兄さんからだった。

内容は"今度の日曜日に家においで"だった。



「御守……ゆき、ひろ…」



お兄さんとヤってる時は何も考えられないぐらい気持ちいいから、他の人とヤる時に勃たなくなったのかなって……ふと思って立ち止まった。

幸弘じゃないと、勃たなくなった……?

どうかなっちゃったのかなって……そう思いながら分かったと返信して、しばらく帰ってなかった自分の家に向かって歩き出す。



家に着くと、何日か振りに鍵を開けて中に入ってカバンを脱衣所に置くとリビングダイニングに向かった。
夕方だったから少し暗かったけど電気も点けずにソファに丸くなって座って考える。

なんで勃たなくなったんだろうって。
別に嫌じゃなかったし、どちらかと言えば気持ちよかった。
なのに、勃たなかった。
本当に幸弘じゃないと勃たないのかな……?
そんな事ってあるの……?



「……お腹すいた」



朝からちゃんとしたご飯を食べてない事に気付いて、キッチンに入って何か食べ物がないか探す。
冷蔵庫の中を見ても直ぐに食べられそうな物はなかった。
料理なんて今までしたこと無いから有り物で料理とか考えられないから、戸棚を漁ってカップラーメンが無いか探していたら、足音が聞こえてきてすぐ側で止まった。
だから足音がした方に振り向くと不思議そうに俺を見ている和葉がいた。



「何を探してるの? 紅葉」
「お腹すいたからカップ麺無いかなって思って……」
「じゃあすぐご飯作るから待ってて」
「うん」



にこって笑いかけてきた和葉に頷くと、戸棚を閉めて離れるとダイニングテーブルの所まで行くと椅子を引いて座って和葉を眺める。

あの日以来なにも言わなくなった和葉が今、なにを考えてるのか全然わからない。
あの日、2週間ぶりに帰った時にばったりと家の中で和葉に会って「まだ自分の身体を売ってるの?」って「いつ帰ってくるの?」って問いただされた。
その時は心配してくれてる和葉がウザくて自分の勝手でしょって突き放して、和葉の事なんてなにも考えずに「和葉だって泰弘と付き合ってるんでしょ? だったら同じじゃん。散々遊ばれてそのうち飽きられて捨てられるんだよ……ねぇ、俺たちがずっと愛されるとでも思ってるの? ばっかじゃないの。そんなのあるわけない」って罵って反論しようとしてた和葉に背を向けて足早に家から出たんだ。

その後、数日後に泰弘から怒られたんだっけ……お前の言った言葉で和葉がって。
そんなの俺に言われてもって思ったけど、それと同時に和葉は泰弘に愛されてるんだなって思ってちょっと罪悪感が湧いた。

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