3.ゲームをする 


和泉が家に来る分には別に問題はない、が……


「和泉、そろそろ許してやれよ」
「いや」


頬をリスのように膨らませて俺から顔をそらす和泉。
それが可愛くてつい甘やかしたくなるが、悪友で今でも付き合いのある宏斗を失うわけにもいかない。
和泉だって宏斗が居なくなったら泣きじゃくって自殺しようとするクセに……

なんてグルグル考えてたらいつの間にか和泉はリビングで1人ゲームをしていた健斗の元に居て、一緒になにやらやっていた。


「……ゲーム終わったら連れてくか」


仲良さそうに兄弟のようにあーだこーだ言い合いながらゲームしてる2人を見守りながら俺はそう決めた。

和泉が逃げ込んできて今日で1週間。
さすがに宏斗の体調が心配だ。


「ゆーくーん!きてー?」
「はいはい」


和泉に呼ばれて2人の側に行って健斗を後ろから包み込むように座る。
すると和泉はむっと拗ねて寂しそうな顔をして、下唇を噛んで泣きそうになるのを耐える。

少しでも離れてると寂しくなって、恋しくなって泣く癖に変に意地はって帰ろうとしないからその後の反動が凄いのだが…
その原因でもある宏斗も宏斗で死にそうになってるからな……似てんだよな、この2人。


「……帰る?」
「いや」
「宏斗死ぬぞ?」
「……やだ。でもやだ」


むすっと拗ねて泣きそうな顔で膝抱えて座って膝に顔を埋めた和泉。
……こりゃ迎え呼ぶしかねーか。


「……ねぇ、ここ…やって?」


和泉をどうやって送り返そうか考えていたら下から声が聞こえて目線を向けると、健斗がほんのりピンクに染めた顔で見上げて俺を見ていた。

あぁ……そういえばゲームやってたんだったっけな。
なんて思いながら「いいよ」って返して、顔を元に戻して画面を見た健斗の頭に顎を軽く乗せて、ゲームを握ってる健斗の手を包み込むようにして中断してるゲームを再開させた。


「ねえ、手……邪魔じゃ、ない?」
「邪魔だったらこうしてないよ」
「……そっか」


包み込んでるから、健斗がドキドキしてんのがすごく良く分かる。
まあ、でも面白いし反応が可愛いから離してやらないけど。


「……ゆーくん」


健斗の得意なところまで来て手を離してバトンタッチしたところで、和泉が消え入りそうな弱々しい声で俺の名を呼んだ。
……自分の答えが出た、かな。


「ん?どうした?」
「ひろのとこ、帰る……ぎゅってして……ちゅー、したい」


あー、限界なんだな。
そう感じて俺はやっとか、なんて思った。

普段、宏斗って呼んでるクセに精神的に限界がくるとひろになって、甘えたいと訴えてくる。
それに、下唇を噛みしめるのをやめない。
これで泣き出したら最悪だな。
そう思った俺はくしゃっと和泉の頭を撫でた。


「タクシー呼んでやろうか?」
「やだ…ゆーくん、がいい」
「分かった」


そう答えたはいいが、健斗を1人で置いていくのもな……なんて考えながら俺は最良の選択を導き出す為の方式を頭に浮かべた。


ー To be continues ー


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