26.結婚する 


「まさか海外で挙式するとはな…」
「日本じゃまだ同性婚は認められてないからな」


宏斗と和泉の結婚式に参列する為に仕事を休んで健斗とやってきた侑亜は新郎側の宏斗と少し離れたところで話していた。


「わざわざ式挙げなくても形だけなら日本でもいいんじゃねーの?」
「和泉相手にそれでいいと思うのか?」
「あー……うん、俺が悪かった」


宏斗と侑亜の視線の先にいる細身のウェディングドレスを着て健斗と終始笑顔で何か話している和泉。
今笑顔でも、いつ泣いて不安がるかも分からない和泉の精神状態を知る2人だからこそ、形だけではなくちゃんと行うべきだと確信したのだ。


「和泉の心、折ってやるなよ? 宏斗が関わるとすげー脆くなるから」
「分かってる……俺だって和泉の事となると生きてけなくなるし」
「お前らその辺すげー似てるもんな」


宏斗と和泉が付き合いだした頃からの2人を見てきた侑亜だからこそ、2人を熟知していた。

喧嘩も度々あり、その度に和泉が侑亜の元へ逃げ込んできては宏斗が衰弱して和泉が泣いて元通り。
和泉が拗ねて構って欲しくてはじめは宏斗にいくが構って貰えず、侑亜のところへ行くと今度は宏斗が拗ねる。
その度に侑亜は似てるなと思っていた。


「あ、ゆーくん!みてみて」


健斗と共に宏斗達の元へやってきた和泉は侑亜の目の前で一回転して見せた。
そしてにっこり嬉しそうに笑って何かを求めるようにじっと見つめた。

そんな和泉に侑亜は目を細めて微笑み「可愛いよ」と伝え、サラサラとした和泉の髪を撫でた。
和泉はふにゃりと締まりのない顔で嬉しそうに大人しく撫でられていた。


「和泉」
「なあに? 宏斗」
「おいで」


和泉を呼ぶ宏斗の元に和泉が近付くと、宏斗は和泉の腕を引き寄せ、それによってバランスの崩れた和泉をしっかりと抱きしめて顎をクイっとあげて上を向かせると侑亜や健斗、その他その場に居る全員に見せつけるように口付け、チュッとリップ音を響かせて離れた。

それを見ていた式場関係者は口元を押さえそれぞれに声を漏らし、健斗は顔を赤く染め、侑亜はやれやれとため息を漏らした。
キスをされた当の本人は顔を熟れたリンゴのように真っ赤に染め、あわあわと金魚のように口を戦慄かせていた。


「すげー美味そう……今すぐ連れて帰って余すところなく食い尽くしてえ」
「なっ///…ひ、ひろのばかあ!!//」


率直な感想を述べた宏斗に和泉は顔を赤く染めたまま腕の中から逃げ出そうともがく。
それを宏斗が許すはずも無く、和泉はただ宏斗の腕の中でジタバタともがくだけだった。


「健斗にはまだ刺激が強すぎた?」
「なっ//ち、違うし」
「ふーん?かわいい」
「ぅ…///」


ほんのりと赤い頬の健斗の顔を覗き込み、楽しそうに微笑む侑亜に健斗が反論すると、侑亜は耳元で囁き、それに健斗はまた顔を赤くした。

2組のカップルがイチャつく教会には太陽から暖かな祝福が注がれていた。


ー To be continues ー


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