1.手を繋ぐ 


なんでここに居座ってるんだろう

リビングに置かれてるソファの上で膝を抱えて座りながら考える。でも、答えは出てこない。
ずっと忘れてたあの人の事を何となく思い出せて来たって、そう伝えたらあの人は嬉しそうに笑ってくれた。
好きなんだなって……何となくそう思ったのを覚えてる。

ふとベランダの方を見ると、こっちに背を向けて煙草を吸ってるのが見える。


「ゆーにい」


ずっとずっと昔にそう呼んでた。
いつも助けてくれた大好きだったお兄ちゃん。そんな人と今一緒に暮らしてる。考えられないな……

聞こえない声で昔の呼び名を言った筈だったのに、バレないように見てた筈だったのに、あの人は不意に振り返って俺と目が合った。そして笑って煙草の火を消して中に入ってきた。


「そんなに見つめてなんかあった?」


隣に座って顔を覗き込むようにして俺の顔を見てきて、それから顔をそらすと手が目に飛び込んできた。
いつもは気にしてないけど、今日はなんだか気になってそっと手を伸ばして握ってみた。

自分とは違って大きくて骨張ってて安心する。


「クスッ…楽しい?」


夢中になって手のひらを合わせたり握ったり撫でてたりしてたら笑われた。


「あ、えっと……」


なんて説明したらいいのか分からなくて手を離そうと引っ込めるけど、それは叶わなかった。
手を引っ込める前に指を絡めて握りしめられた。


「好きな時に触ればいい」


そう言って握られた俺の指にキスして微笑んでまた離れて行った。
「健斗、顔真っ赤」なんて言って。
そんなこと言われなくても知ってるし、こうなった原因はゆーあなのに。


「うるさいっ//」


ぎゅっとまた膝を抱えて赤くなった顔を埋めてやり過ごす。
ゆーあのばか


ー To be continues ー


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