短めの噺 | ナノ




ただ一人のお姫様 (魁人×沙羅)

「行ってらっしゃい」


そう言い、車から出て行こうとする姫を引き寄せてキスして微笑むと、お姫様は頬を紅潮させて慌てて「行ってきます」と言って車から降りて学校へ行く。
本当に可愛らしい俺のお姫様

お姫様を送り出すと車を走らせ、会社に向かう。
会社に向かうまでに会社での俺を作り上げる。姫の前での俺と会社での俺は全くの別人だって言われる…もちろん、姫に。
故意にそうしているのもあるが、プライベートと仕事は分けるのが俺のスタンスだから仕方のない事だ。


会社に着き、車を横付けにして降りると秘書が2人近付いてきた。その片方に車の鍵を渡して会社に入っていく。


「社長、本日の予定ですが…」
「終了時刻は?」
「22時です」
「明日に回せるやつは明日に回せ。18時上がりだ」
「…分かりました」


社長室へ向かうまでの道中に細かい今日の予定を聞き、変更・移動を秘書に伝えて部屋に籠る。
そして、今日中に終わらせなければならない案件を片っ端から片付けていく。
休憩中、お姫様からメールかSNSがないかチェックをすると1通届いていた。それを読んでいると頬が緩む


「…可愛いやつ」


側にいなくても届いたメッセージで和むし癒される。
返信をすると、残りの仕事をちゃっちゃと片付けていく。

宣言通り18時に切り上げると、車を走らせて家に向かう。家に着き、玄関を開けるとパタパタと足音が聞こえ、愛しいお姫様が姿を現わす。


「おかえりなさい!」
「ただいま」


ふわりと抱きしめると珍しくすり寄ってくるお姫様
本当に愛らしい。すり寄る顔を上に向けさせてちゅっと軽く触れるだけのキスをすると顔を赤らめてあわあわと俺を見つめてくる。
……理性、保つので一杯一杯になりそうだ。


「か、魁人さん…///」
「ただいまのキス、かな」


頭を撫でて微笑むと、ネクタイを引っ張られて引き寄せられ一瞬だけ触れ合った唇


「お、おかえりの…キス、です///」


顔を茹でたこの様に真っ赤に染めて言い逃げした姫さん。


「……やられた」


不覚にもにやけてしまった口元を手で覆い隠し、脱兎の如く逃げ去った姫さんを見つめる。
これだから沙羅は離しがたいんだ。愛しい…すごくね

ー END ー



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